「CES 2025」から見る車載半導体トレンド:置き去り検知や機械学習に注目(2/2 ページ)
自動車メーカーの設計アプローチが従来のドメインアーキテクチャからゾーンアーキテクチャへと移行する中、センサー機能の最適化や、マルチモーダル入力データと機械学習(ML)とを融合させた状況認識が推進されている。本稿では、「CES 2025」で展示された車載向けのソリューションを紹介する。
自動運転向けサラウンドビューカメラ
自動運転/ADAS向けの車載用サラウンドビューカメラも多くのブースで展示されていた。下図のように、Microchipのシリアライザーは最大伝送速度8Gbpsの3台のカメラに搭載されている。同社のデシリアライザーは、ビデオデータを受信して、車載ネットワークのオープンスタンダードであるASA Motion Link(ASA-ML)を介して中央コンピュータまたは高性能コンピューティング(HPC)に集約するよう構成され、ゾーンアーキテクチャを模倣している。
ADIは、シリアライザー/デシリアライザー(SerDes)ソリューションを展示し、独自の伝送技術「Gigabit Multimedia Serial Link(GMSL)」のデモを披露した。GMSLの特徴は軽量さだ。1本の双方向ケーブルで最大12Gbpsのデータを伝送し、重量削減に貢献する。
視覚言語モデルを用いた状況認識も
ビジョンAI向けプロセッサを手掛けるAmbarellaは、スタックに大規模言語モデル(LLM)を統合したデモを披露した。この技術は、2015年にAmbarellaが買収したイタリアのスタートアップであるVislabによって開発されたものだ。
このシステムは6台のカメラと5台のレーダー、そして自動運転レベル2+〜レベル4対応の自動車ドメインコントローラー「CV3」で構成されている。視覚言語モデル(VLM)「LLaVA-OneVision」によって、より高度に状況を踏まえた意思決定が可能になった。
CES 2025ではVislabの創設者であるAlberto Broggi氏がデモを紹介し、自動車に大規模言語モデル(LLM)を活用する利点について説明した。
「仮にあなたが世界最高の知覚力を持っていて、あらゆるものを知覚でき、車の位置を把握したり、歩行者を見つけたりできるとする。それでもなおあいまいな状況があって、問題は残る。自分の車線の前に車がいたとしたら、追い越しができるかどうかは状況次第だ。だから、より高度な状況把握が必要なのだ」(Broggi氏)
【翻訳:田中留美、編集:EDN Japan】
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