ホビー用途ではまだ現役!? 懐かしのDECご長寿コンピュータ「PDP-11」:マイクロプロセッサ懐古録(1)(3/4 ページ)
最新の電子機器には載らないものの、昔懐かしのプロセッサはホビー用途などでひそかに息づき、エンジニアたちの「遊び心」をくすぐっている。本連載では、そんな「いにしえ」のプロセッサを取り上げ、紹介していく。まずはDEC(Digital Equipment Corporation)が開発し、28年もの長きにわたり生産された「PDP-11」を取り上げる。
DEC内部で設計した「T-11」
このF-11は廉価な割に性能が高いということで非常に好評だったのだが、これを受けて次に開発されたのがDC310こと「T-11」である。TはTinyの略で、1981年に完成。DECとしては初めてISSCCでの発表も行っている(図5)。今度はDEC内部で設計が行われていて(回路設計はDobberpuhl博士が担当したとのこと)、ただ製造は引き続きAMI Semiconductorであったが5μm NMOSプロセスが使われた。
このT-11はワンチップでPDP-11互換となるもので、総トランジスタ数1万3000にすぎず、量産時のコストは10米ドル未満になることを目指した。FPUやMMUは搭載しなかった(外付けも不可能)のでPDP-11の製品ラインに使うことはできなかったが、Cycle Time 400ナノ秒(2.5MHz駆動)でありながら、基本的な命令に関してはF-11と同等の速度だったという。理由の一つとして、1チップに収めたことでレイテンシを削減できたということは挙げられるだろう。
PDP-11そのものには使われなかったが、DECのRQDX2というHDDのコントローラーとかVT240ターミナル、あるいはAtari System 2などにも採用されている。また当初は2.5MHz駆動だったのが、最終的には10MHzまで動作周波数が上がっていて、またSynertek(後にHoneywellが買収)からセカンドソース製品もリリースされている。実はこのT-11が、今手に入れて遊ぶのなら一番手頃な製品ではある。ただFPUはともかくMMUが無いのは、UNIXなどを動かして遊ぶには不向きという制約があるので注意が必要だ。
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