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32年ぶりの新製品も 波乱万丈だったMotorola「MC6800」マイクロプロセッサ懐古録(7)(4/4 ページ)

今回はMotorolaのプロセッサ「MC6800」を紹介しよう。開発から市場投入に至るまで波乱万丈な経緯を持つMC6800は、派生品も多く、一時代を築いた息の長いプロセッサである。

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32年ぶりの新製品

 このシリーズの最後の製品が「MC68HCS08」と「RS08」である。MC68HCS08はMC68HC08のコアを論理合成による回路設計とプロセス変更により高速化したコア、RS08はそのMC68HCS08のリソース削減版である。RS08は2006年に(Motorolaのデジタル半導体部門を引き継いだ)Freescaleから発表されたもので、MC6800が出てから実に32年ぶりの新製品ということになる。ここまで息が長いアーキテクチャも珍しいだろう。

 別方面、つまりMPUとして強化されたのが1979年に登場した「MC6809」である。MC6800からレジスタ構成を若干変更するとともに、MC6800の特徴だったDirect Page Addressingの機能を強化するなど性能向上策も盛り込まれていた。また単体でもPreemptiveなOSの稼働が可能(OS-9)であったが、外付けでMC6829 MMU(Memory Management Unit)を併用する事で最大2MBのメモリ空間を利用し、プロセス保護も可能になった(OS-9 Level2で対応)。もっともこのMC6809が登場した前年は、競合であるIntelは16bitのIntel 8086を既にリリースしており、1982年にはより本格的な16bit CPUである80286を発表(出荷は1984年)していた。これに比べるとMC6809はどうしても見劣りすることは避けられず、Motorolaはこの後「MC68000」の開発にまい進してゆく事になる。

新プラットフォーム投入も、市場はCortex-Mが席けんすることに

 Freescaleの時代、S08あるいはRS08はローエンド向けのMCUとして広く提供されていたが、そこからの展開に行き詰まりを見せていた。そこでColdFire v1コアと組み合わせたFlexisという新しいプラットフォームを2007年頃に発表する。これはソースコードとパッケージに互換性を持たせるというもので、RS08コア向けに書いたプログラムが(Coldfire v1用に再コンパイルするだけで)そのまま32bitでも動作するという形で性能面でのスケーラビリティを確保しようとしたものだが、最終的にこのマーケットはCortex-Mに押し流されてしまった。もっとも現在でもFlexisプラットフォームのColdFire v1コアそのものはActiveで提供されている(RS08の方はEOL[製造中止品]扱いである)。考えてみればColdFireはMC68000の命令互換(完全互換ではなく部分互換)であり、これはMC6809の延長にある事を考えると、MC6800シリーズの末裔ともいえなくもない。

 MC6800シリーズはセカンドソースも広範に行われた。特に日立製作所はさまざまな製品のセカンドソースを提供しており、ベーシックマスターなどに採用されたので古い読者の方には、おなじみかもしれない。ただ売り上げという意味ではMC6800/6809のMPUラインよりも、MC6801/6805/6808のMCUラインの方が圧倒的に多かった。その意味でも時代を代表するアーキテクチャだったと言えるだろう。

⇒「マイクロプロセッサ懐古録」連載バックナンバー一覧

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