シングルペアイーサネット解説! 従来規格との違いとは?:知っておきたいSPE(3/4 ページ)
今回はシングルペアイーサネット(SPE)の特長や規格、適用事例などを紹介します。
5. 日本のSPEコンソーシアムの活動
ここからは日本のシングルペアイーサネットコンソーシアムの活動について詳しく紹介します。
コンソーシアムの設立の目的と理念
日本国内では日本国内でSPEのネットワークを広め、普及させることを目的とした「シングルペアイーサネットコンソーシアム」(略称SPEC)という組織が活動しています。
設立の目的としては、さまざまなSPE関連の規格を一般に分かりやすく提示しつつ、デバイスメーカーやケーブルメーカーなど、どのように使っても同じシステムで同じ性能が出て、相互運用性が確保でき、安全に利用できるようにすることです。
海外ではコネクター別にグループができていますが、このコンソーシアムではコネクターについては規格に準拠していれば、どのグループのものでも使用できることを想定しています。
これが他のコンソーシアムとの活動目的の大きな違いです。
SDGsを見据えた新しいエコシステムの構築
コンソーシアムが目指すところは、SDGs的な観点から新しいエコシステムを構築することです。全てのシステムで使用できる技術として、より持続可能で効率的なネットワークインフラを実現することをサブテーマとしています。
従来は電源ケーブルと通信ケーブルが別々に必要でしたが、今後はSPEケーブル1本でサービスを提供できます。
さらに、DC給電を行うために、地域ごとの電力事業者の電源をそのまま使わずに送電できるので、電源のソースを自由に変更できるという大きなメリットがあります。再生可能エネルギーとの親和性も高く、環境負荷の低減に貢献できる技術です。
実装ガイドラインの策定と進捗
コンソーシアムでは現在、情報通信技術委員会(TTC)と協力して実装ガイドラインを作成しています。このガイドラインでは、短距離通信、長距離通信、バス接続という3つのカテゴリーに分けて技術を整理しています。
現在はバージョン5まで完成していますが、規格化自体がまだ進行中であるため、最終的にはバージョン10程度まで改訂が続くと予想されています。
カテゴリーAは短距離用で10Mビット/秒から10Gビット/秒までをカバーし、カテゴリーBは長距離用、カテゴリーCはバス接続用として、それぞれのユースケースに応じた適切な規格と実装方法が提示される予定です。
現在のイーサネットと同様に、1つのチップでいろいろな構成が組めるように進化していくと考えられています。ただし、10Mビット/秒から10Gビット/秒までを同一チップで実現するのは難しいため、ある程度の速度帯ごとに製品が分かれる形になるでしょう。
6. SPEの適用可能な分野や活用事例
社会基盤からホビー用途まで幅広い応用可能性
SPEは、社会基盤からおもちゃやホビー用途まで、多くの領域で使用される可能性があります。電池で動くようなおもちゃについても対応できる技術となっており、その適用範囲の広さが大きな特徴です。
現在、RJ45イーサネットが使用されている場所や、低電圧で給電したい場所が主なターゲットとなりますが、既存のイーサネット環境からの移行はもちろん、これまでイーサネット化できなかった領域への展開も期待されています。
サーバとデータセンターでの活用
まず、サーバやデータセンターでの使用が考えられます。現在、これらの施設ではケーブルが複雑に絡み合った状態になっており、LANケーブルから1ペアのSPEケーブルに変更することで、ケーブル数を大幅に削減でき、配線管理が容易になります。
データセンターでは膨大な数のケーブルが使用されているため、1本1本は細くても、全体としてのスペース削減効果は大きく、冷却効率の向上や保守性の改善といった副次的なメリットも期待できます。
家庭用ネットワーク機器への展開
光回線終端装置(ONU)などの家庭用ルーターやPC接続部分での使用や、IP(Internet Protocol)電話システムなども有望な分野です。
現在、これらの機器はLANケーブルで接続していますが、この部分をSPEに変更することで、家庭内のネットワーク機器がよりシンプルな配線でより小型化され、設置の自由度やオフィスの美観向上、配線コストの削減につながります。
カメラとセンサーネットワークでの優位性
特に期待されているのがカメラやセンサーへの適用です。現在、イーサネット対応のカメラにはLANケーブルが接続されていますが、カメラの大きさがほぼコネクターの大きさに支配されている状況です。
これをSPEコネクターに変更すると大幅に小型化でき、給電も同時にできるため、カメラ自体をより小さく設計できる可能性があるため、監視カメラ、産業用カメラ、IoTセンサーなど、設置場所の制約が厳しい用途では特に大きなメリットとなります。今後、この分野から普及が始まると考えられています。
基地局とワイヤレスインフラへの応用
基地局での使用も検討されており、ネットワークインフラと給電を1本のケーブルで実現できるため、設置工事の簡素化やコスト削減が期待できます。実際にWi-Fiアクセスポイントなどで試験的に使用されている事例もあります。
段階的な普及シナリオ
より広い視点で見ると、現在LANケーブルが使用されているほとんど全ての場所が対象になり得ます。
SPEが自動車で普及した理由は、自動車内は外部と接続しない閉じたネットワークのため、容易に変更できたことですが、SPE開発の最初のきっかけとなったのは、EV化に伴いケーブルが増加し、車重を軽くするためにケーブルを細くする必要があったことです。
ただし、相互接続性が必要な一般市場では、すぐにコンシューマー向け製品に展開するのは難しいため、まず比較的閉じたネットワークである工場内のロボットや制御機器などのFA機器での採用が進むと予想されています。
次にビルやオフィスのネットワークへの展開、そして最終的に一般消費者向けという順序で普及していくと考えられています。
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