8ビットMCUでまだ現役 Atmel買収後も生き残った「AVR8」:マイクロプロセッサ懐古録(14)(1/3 ページ)
今回は、旧Atmel(現Microchip Technology)のRISCプロセッサ「AVR8」を紹介しよう。ノルウェー出身の2人の技術者が開発したAVR8は、8ビットMCUでは一時期30%のシェアを獲得するほど広く使われた。AtmelがMicrochipに買収された後も、いまだに“現役”である。
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「AVR8」の2人の開発者
回顧録に取り上げるにはまだ早くないか?という声も聞こえそうな旧Atmel(現Microchip Technology)の「AVR8」であるが、製品はともかくコアとしてはもう進化する方向にはなさそうだし、それを言えば「PIC16」も「8051」もまだ現役で使われているから、AVR8を取り上げても差し支えはないだろう。
AVR8コアに関する話は以前ITmedia Newsでもちょっと言及しているが、あらためてご紹介したい。AVR8、というかAVRという名称は"Alf and Vegard's RISC processor"の略である(Atmelは公式には「何の略でも無い」としていた)。開発者はその名の通りAlf-Egil Bogen氏(図1)とVegard Wollan氏(図2)の2人である。
図1:"Atmel - Meet Alf-Egil Bogen, Inventor of the Atmel AVR Microcontroller"より。もともとはAtmel University Programの一環として2012年に公開された動画だが、現在はMicrochip Developer Helpチャネルで公開されている
図2:"Vegard Wollan Talks AVR: The History of AVR Microcontrollers"より。こちらは2014年のインタビューであるが、やはり現在はMicrochip Developer Helpチャネルで公開されている
2人はNTNU(Norwegian University of Science and Technology:ノルウェー科学技術大学)の修士課程の卒業論文のテーマとして、8bitのRISCプロセッサの設計を完成させる。1991年に卒業後、2人はそのままNordic VLSIというデザインハウスに就職する(現在のNordic Semiconductorの前身)。このNordic VLSIはNTNU出身者が立ち上げた企業であり、なのでNTNUの卒業生がここに入るのは割と自然な流れだったというか、2人はそもそも卒業前からNordic VLSIで仕事もしていたそうだ。Nordic VLISはMixed-SignalのASIC設計を得意としており、顧客のASICの中に2人が設計したμRISCコアを組み込むといった事もあったらしい。ただMixed-Signal ASIC向けでは、出荷されるμRISCコアの数量はそう多くない。2人はμRISCコアに自信があり、それもあってデジタル半導体企業にこのμRISCコアを採用してもらうべくシリコンバレーに渡り、最終的にAtmelにたどり着く。
メモリ製造から出発したAtmel
そのAtmelであるが、もともとはEPROM、次いでFlash Memoryを製造する会社であった。次いでMCUを手掛けるが、最初に出したのは8051ベースの製品だった。面白いのだが、もともとAtmelはFablessとしてスタートした。ところがFablessは必ずしも目的にあったFabを使えるとは限らないという問題があり、同社は最終的に1989年にHoneywellが保有していたコロラドスプリングスのFabを6000万米ドルで買収する。この際にHoneywellが保有していた特許もいろいろと買収したほか、Honeywell買収前に製造を委託していたGI(General Instruments)の設備を事実上買収した折に特許も幾つか買収して特許ポートフォリオを構築しており、これらを利用してIntelから8051のライセンスを取得する事に成功した。
この後フランスのES2(European Silicon Structures)という会社を買収する。同社はARMのライセンスを保有しており、アナログブロックはAtmelが開発する事で初期の携帯電話向けのチップセットを開発して販売しているが、これは一般的なMCU向けには遠い構成だった。ただ8051は8051でしかなく、Intelを含む競合メーカーとの競争に打ち勝つための何かが必要だった。そうした折にμRISCの売り込みが来たわけだ。最終的にAtmelはμRISCの権利をNordic VLSIから丸ごと買収、Bogen氏とWollan氏もAtmelに移籍する(といってもノルウェーにAtmel Norwayという子会社を作り、最初はそこで勤務したようだが)。そして1996年に発表されたのがAVR(AVR8)である。
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