SiCパワー半導体とは? 大電力製品の小型・軽量化にむけて:知っておきたいSiCパワー半導体(2/3 ページ)
今回はSiCパワー半導体の基本特性やSiとの比較、活用例などについて説明します。
2. SiCパワー半導体とは?特性と製品へのメリット
2-1. SiCの物性的特長と活用領域
SiCは、Siと炭素(C)の化合物、炭化ケイ素で構成される半導体材料です。下の図は、パワー半導体の性能向上につながるSiCの特徴的な物性値を表しています。Siに比べて、それぞれ3〜10倍ほど優れています。
バンドギャップ
SiCは、Siに比べて約3倍の大きなバンドギャップを持っています。バンドギャップの大きさは、後述の「熱伝導率」や「絶縁破壊強度」を向上させます。また、高温時の安定動作にも貢献します。
熱伝導率
熱伝導率もSiに比べて3倍ほど大きいです。バンドギャップの高さとあわせて、高温時の安定動作に貢献します。半導体は、電流が流れる際の損失が熱になって放出されますが、その発熱がICの動作を妨げます。熱伝導率が高いことにより多くの電流を流すことができるため、放熱機構の削減につながります。
絶縁破壊電界強度
SiCの絶縁破壊が起こる電界強度は、Siに比べて10倍近く高いです。MOSFETでは、ドリフト層の厚みを増やすことで耐圧を高めることができますが、一方で厚みがあるほどオン抵抗が大きくなる問題があります。SiCは絶縁破壊電界強度が高いため、ドリフト層が薄い状態でも高耐圧を実現でき、オン抵抗も小さくなります。
トランジスタ構造
MOSFETとIGBTの等価回路を図示しました。IGBTは出力段をバイポーラTr.で構成することによって高耐圧を実現しましたが、スイッチング速度には制限が生じます。SiCのMOSFETは、SiのMOSFETと同じ構造で製造できるため、高耐圧と高速なスイッチング動作を両立できます。
これらSiCの特長は、パワー半導体の性能を飛躍的に向上させます。従来よりも大電力をより高速に制御でき、活用領域の拡大が期待されています。
2-2. SiCが製品に与えるメリット
SiCの物性的特長は、製品にさまざまなメリットをもたらします。例えば、優れたスイッチング特性は高周波動作を可能にしますので、トランスやコイルなどの周辺部品の小型化や高効率化に貢献します。低発熱や高い熱伝導率によって放熱機構を削減できますので、SiCを用いたパワーモジュールはSiに比べて1/10程度まで小さくできるといわれています。また、パワーモジュールの小型化や放熱機構の削減によって、コストダウンにつながることも期待されています。
2-3. SiCパワー半導体の注意事項
製品へのメリットが多いSiCパワー半導体ですが、従来のSiパワー半導体とは異なる使用上の注意事項があります。この章では、MOSFETのゲート駆動電圧に関して紹介します。
一般的なSi-MOSFETでは、ゲート電圧(VGS)が0VになるとFETがオフします。一方で、SiCの場合はFETがオンからオフに変化する際、0Vではゲートの電荷を放電しきれず、ゲート電圧(VGS)にマイナス電位の印加が必要になるデバイスがあります。データシートにあるゲートチャージ電荷量(QG)-VGS特性図からQGがゼロになる電圧を確認して、ゲート駆動に適したゲートドライバーを選定してください。
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