高効率が音にも好影響? GaN採用オーディオアンプのメリットとは:インフィニオンが解説(1/2 ページ)
インフィニオン テクノロジーズ ジャパン(以下、インフィニオン)は2026年6月17日、窒化ガリウム(GaN)や炭化ケイ素(SiC)といった次世代パワー半導体を用いたオーディオ用クラスDアンプのメディア向け説明会を開催した。パワー半導体と同様の理屈でクラスDアンプにも好影響を与えることを紹介。オーディオイベントでは試聴展示も行われた。
インフィニオン テクノロジーズ ジャパン(以下、インフィニオン)は2026年6月17日、窒化ガリウム(GaN)や炭化ケイ素(SiC)といった次世代パワー半導体を用いたオーディオ用クラスDアンプのメディア向け説明会を開催した。
GaN/SiCの優位性がクラスDアンプでも効果を発揮
スイッチング方式のパワー半導体デバイスはスイッチオン時に電圧が0、オフ時に電流が0になるため、理論上は常に電力損失0で動作する構造だ。しかし実際は、スイッチ周辺の浮遊容量やスイッチ自体の抵抗などの影響で切り替えが遅れ、電圧/電流どちらも0にならない瞬間が発生し、損失を生み出している。GaNやSiCなどの次世代パワー半導体はシリコン(Si)よりもスイッチング速度が速く、電圧/電流どちらも0の瞬間を短くできることが低損失につながっている。
一方、パルス幅変調(PWM)方式を用いたクラスDアンプは、オーディオ入力信号(サイン波)とキャリア信号(三角波)からPWM信号を生成し、パワーMOSFETで増幅してからローパスフィルターを通してオーディオ信号を作り出す。
PWMがオン/オフ波形のため、パワー半導体と同様に理論上は損失が発生しないが、実際にはSi-MOSFETの増幅段階で損失が生まれ、歪が発生する。そのため、増幅素子をSiからGaNやSiCに変えることで、パワー半導体と同じように損失を抑えられる。
Infineon Technologies米国法人のクラスDオーディオシステムズ担当シニアプリンシパルエンジニアを務める本田潤氏によると「Si-MOSFETのクラスDアンプは損失などの兼ね合いでスイッチング周波数400kHzが最適値とされていて、音声信号は40kHzまで増幅可能だった。これをGaN HEMTに置き換えた場合、スイッチング周波数は1MHzに上昇でき、音声信号の増幅も100kHzまで広帯域化できる」という。
またクラスDアンプはローサイドスイッチとハイサイドスイッチを交互にオン/オフしているが、切り替えのタイミングで両方オンの瞬間が発生すると発熱につながるため、両方オフのデッドタイムを設けている。この際、出力波形がフローティング状態になり、Si-MOSFET内のボディダイオードを導通して逆回復電荷を発生させることが歪の原因になる。GaN HEMTはスイッチングの速さからデッドタイムを短くできるうえ、構造上ボディダイオードを持たないことから、歪を低減できる。
「オーディオ的に言うと、特に出力レベルを上げてハードスイッチング動作をする際に、GaN HEMTは全高調波歪率+ノイズ(THD+N)を抑えることができる。カットオフ周波数も100kHzまで伸ばしたことで、より正確にオーディオ波形を表現できる」(本田氏)
音質面以外では、低オン抵抗による低発熱や高効率から小型化できることもメリットだ。本田氏は「GaN HEMTの場合、ヒートシンクなしで600W/CHを実現できる。試験としてサイン波を1分間、600Wで再生して出力段の温度を計測したが、Si-MOSFETであれば150℃以上になるところ、GaN HEMTは82℃だった。自分でも信じられず何度も試験をやり直したくらいで、GaNでないと実現できない領域だ」と述べる。
インフィニオンは「Cool GaN」シリーズのGaN HEMT採用を採用したクラスDアンプ評価ボードとして、375W×2(2Ω負荷時)の「REF_Audio_GaNb_750W」と、600W×2(4Ω負荷時)の「REF_Audio_GaNc_1200W」を用意する。本田氏は「インフィニオンのCoolGaNは新しい素材と動作原理で、現時点で最も理想に近いパワーデバイスになっている。オーディオでは広帯域や低歪、小型化を同時に実現できる。これらの特徴と低発熱から、48Vシステムなど高電圧化が進む車載オーディオにも貢献できる」とした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.






