プロトタイプから量産まで 活用広がる産業用SBC:過酷な環境への耐性が強み(2/2 ページ)
生産ライン停止の防止や、AI対応アプリケーションの普及拡大などを背景に、産業用シングルボードコンピュータ(SBC)への需要が高まっている。処理性能だけでなく、過酷な環境を含めさまざまな現場で動作する信頼性の高さが求められているからだ。
電源の信頼性も重要に
産業環境では電源の信頼性も重要な課題となる。電源障害が発生するとデータの破損、ストレージの損傷、さらには高コストな稼働停止状態につながる。EDATECでは、仕様以上の基準で部品を選定することで、こうした課題に対応している。具体的には、SBCが許容可能な電磁干渉量や静電気放電量、光絶縁や容量性絶縁の採用有無などを詳細に考慮している。例えば、EDATECの24V I/Oには80V定格の部品を採用しており、必要以上の余裕を持たせることで、信頼性向上を実現している。また、スーパーキャパシターによるバックアップなどの電源喪失対策も提供しており、メモリや長期保存用の不揮発性ストレージへの影響を防ぎながら、システムを正常にシャットダウンできる。
過酷な環境条件への耐性も最優先事項の一つである。Gateworksは、ファンなどの放熱方法のない環境や電源接続が難しい環境などの極端な産業環境にも耐えられる堅牢な電源を設計している。こうした電源は、大型トラクターによる強い振動が発生する鉱山現場から、危険区域や極端な温度条件下にある工場、防衛用途、さらには宇宙分野に至るまで、幅広い環境で使用できる。
ここまでに紹介した事例は、産業用コンピュータに処理性能のみを求めていた時代から、過酷な環境でも安定して動作する能力が高く評価される時代へと業界全体が大きく変化していることを示している。
次世代エッジコンピューティングの実現
SBCは産業システムの未来を支える技術であり、今後数年でこの市場の競争はさらに激化すると予想される。激化した市場環境においては、技術エコシステム全体における連携がこれまで以上に重要な役割を担う。エッジコンピューティングの多様な要件を1社のサプライヤーで満たすことは難しい。成功の鍵を握るのは、プロセッサメーカー、ボード設計者、システムインテグレーター、ソフトウェア開発者、流通パートナーが連携し、イノベーションを加速できるかどうかである。
このような連携により、製品を市場投入するまでの期間をこれまで以上に短縮することも可能だ。従来の手法を採用してきたユーザーの間でも、SBCへの移行を検討する動きが広がっている。試作から量産へのプロセスを迅速に進められることに加え、高い柔軟性と豊富な価格帯が評価されているからだ。定評あるハードウェアソリューションを採用すれば、開発期間を最大6カ月短縮できるだけでなく、用途に応じた柔軟なカスタマイズも可能になる。
産業用SBCは、今後のオートメーション、エッジコンピューティング、AI分野において重要な役割を担う存在になりつつある。信頼性、性能、柔軟性の面における大きな強みを背景に、今後も多様な用途で利用が広がることが期待される。
筆者紹介
Shawn Luke:DigiKeyのテクニカルマーケティングエンジニア。DigiKeyは電子部品とオートメーション製品の最先端商取引流通のリーダーの1社であり、約3000社の優良ブランドメーカーから1740万点を超える部品を提供している。
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