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燃料電池や太陽電池を学ぶ前の基礎固め知っておきたい 電池の仕組み(4)(2/2 ページ)

これまで電池の基礎的な仕組みから原理、種類など、広義にわたって解説してきました。最終回は電池を表す記号および電池の安全性、そして2ページ目にて燃料電池や太陽電池、キャパシタなど、そのほかの電池について解説します。

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そのほかの電池

 一次電池や二次電池以外の電池として、燃料電池や太陽電池があります。また、電池には分類されませんが、同様に電気を蓄えるものとしてキャパシタがあります。これらについて説明します。

1.燃料電池

 空気亜鉛電池は、プラス極である酸素を外部から供給する電池でしたが、燃料電池はマイナス極も外部から供給する電池になります。マイナス極の反応物質としては主に水素を使いますが、水素は空気中にほとんど存在しないため、燃料タンクに蓄えて供給することになります。

 燃料として水素ガスを供給するタイプ、天然ガスやメタノールから改質器でいったん水素を取り出して供給するタイプ、メタノールなどの燃料を直接供給するタイプなどがあります。電池反応の原理は使い切りの一次電池と同じですが、燃料を入れ替えると何度でも使える点は二次電池と似たものであり、燃料を供給し続けると発電し続けるので、むしろ、発電機と同じと考えた方が分かりやすいでしょう。

 燃料電池の原理は水の電気分解の逆の反応で発電を行うものです。水溶液に金属の電極を入れて電流を流すと、マイナス側には水素ガス、プラス側には酸素ガスが発生します。燃料電池では、プラス極に酸素、マイナス極に水素を供給して電力を発生させるものです。

図5 燃料電池の原理
図5 燃料電池の原理

 燃料電気の原理の発見は古く、ボルタの電池発明の翌年となる1801年にイギリスのハンフリー・デービー(1778〜1829)が提唱しました。実際の燃料電池はグローブ電池を開発したウィリアム・グローブが1839年に開発しています。燃料電池が実用化されたのはアメリカのNASAによるもので、有人宇宙船のジェミニ5号に搭載されたのをはじめ、宇宙船の電源として使われています。燃料電池の構造を図6に示します。燃料電池は電池内に電気を蓄える部分がなく、単なる化学反応装置なので、いかに効率良く反応させるかが重要になります。

図6 燃料電池の構造
図6 燃料電池の構造

 燃料電池の利用方法の1つとして、分散型の発電システムが注目されています。分散型発電は家庭で燃料電池で発電し、発生する熱で温水を作る「コジェネレーションシステム」で電気と熱を同時に作る効率の良いシステムです。最近では、電気自動車用の電源として開発されたり、小型で持ち運びできる「マイクロ燃料電池」が開発されたりと、歴史は古いですが、その形を変え、新しい電池として注目されています。

2.太陽電池

 太陽電池の基本構造は、光が当たると電子を放出するn型半導体と、正孔(ホール)を発生させるp型半導体を接合(pn接合)した、電子的なデバイスです。燃料電池と同様に電池にエネルギーを蓄えるのではなく、無尽蔵の太陽光を電気エネルギーに変換している発電装置です。

図7 太陽電池の原理
図7 太陽電池の原理

 太陽光は、さまざまな波長の光線の集まりのため、エネルギー変換時のロスが生じ、電気に変換できる「エネルギー変換効率」は、最高水準でも20%台です。太陽電池は電卓や腕時計などに使われていましたが、性能の向上と価格が低下してきたため、家庭用の電源や工場や学校などで使用する電源として、大型のパネルを使用したものが増えてきています。

 材料が安く、製造設備もシンプルな低価格な太陽電池として開発が進んでいるのが、色素増感太陽電池です。電池の構造としては電解液を含む湿式の太陽電池であり、色素が光をエネルギーに変換している点では、光合成に似ています。エネルギー変換効率が10%程度と低いことや耐久性が低いことが開発課題です。

図8 色素増感太陽電池の原理
図8 色素増感太陽電池の原理

3. キャパシタ

 電池は化学反応を利用していますが、キャパシタは化学反応ではなく、「電気二重層」という現象を利用しています。キャパシタに電圧を掛けると、キャパシタ内部のプラス極にはマイナスイオンが、マイナス極にはプラスイオンが移動して電気を蓄えることができます。

 電池は化学反応を利用しており、電極の内部まで電気を蓄えることができますが、キャパシタは電極表面でしか電気を蓄えないので、たくさんの電気を蓄えることができません。また、電池は電圧が比較的に安定していますが、キャパシタは蓄えた電気量によって電圧が変わるという使いにくさもあります。 欠点は容量が小さいことですが、瞬間的に電流を流すことができる特徴もあります。最近のナノテク技術により、電極の面積を大きくすることが可能となってきており、今後の発展が期待されています。

図9 キャパシタと二次電池の違い
図9 キャパシタと二次電池の違い

 蛇口をひねれば水が出るように、コンセントにつなげばいつでも電気を取り出すことができる。これまで、私たちは電気が無尽蔵なものと思い、浪費してきました。電池を使ったコードレス機器が使われるようになると、電池を通じて、初めて電気の大きさと重さを感じるようになりました。電源コードを断つことによって、無尽蔵のエネルギーではなく、有限のエネルギーとして感じるようになったといえるでしょう。

 電池は電気製品を動かす電源としてだけでなく、効率良くエネルギーを使うためにも用いられています。例えば、ハイブリッド電気自動車は、ブレーキや減速時に電池にエネルギーを蓄え、発進や加速時にモータを回し、パワーを補助するものです。エンジンの負荷が小さくなり、燃費の向上にもつながります。また、太陽光や風力などの自然のエネルギーは安定した電力が得られないという欠点がありますが、電池にいったん蓄えることによって、安定したエネルギーとして使うことができます。

 電気を利用する製品の歴史は電池の発明によって始まりました。発電機の発明により、いったん、発電所から供給される電気にその座を譲りますが、モバイル機器の発展とともに、電源として、再度、電池がクローズアップされることになりました。そして、これからは、電気を大切に使う省エネルギーの観点からも、電池が注目されていくでしょうし、電池はますます発展し、さまざまな場面で私たちの生活を豊かにしてくれるでしょう。

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