携帯型機器にこそ役立つ「USB 3.0」、Wi-Fiではダメなのか:高速シリアルインタフェース技術(2/5 ページ)
モバイル機器にどのようなインタフェースを備えればよいのか、機器設計者の腕の見せ所だ。考え得るインタフェースをずらりと並べる手法もあるが、小型化を考えると得策ではない。USB 3.0はデータ転送速度が高く、電力を送る機能もある。HDMIやWi-Fiと比較したUSB 3.0の利点や欠点を紹介する。
USB 3.0のコネクタが大き過ぎる
USB 3.0のタイプAコネクタはUSB 2.0用と同一サイズである*2)。ただし、携帯電話機やタブレットなどに向けたUSB 3.0のマイクロBコネクタの寸法については話が別だ。USB 3.0マイクロBコネクタは、構造が従来のUSBコネクタとは大きく異なる。図1のように、USB 2.0互換のコネクタの隣にUSB 3.0用の拡張部分が追加された形で、かなり大型化している。
*2) USBのコネクタ形状は6種類に分かれている。大型のタイプA、タイプBの他、小型のミニA、ミニB、さらに小さなマイクロA、マイクロBである。
図1 USB 3.0のマイクロBコネクタ USB 3.0用の拡張部分がUSB 2.0コネクタの脇に付いている。マイクロBコネクタはUSB 2.0のコネクタよりも大型であるため、モバイル機器メーカーの懸念の種となっている。
USB 3.0のマイクロBコネクタはUSB 2.0のコネクタと比べると幅が大きい。機器をどうやって小型化しようかと苦労している携帯機器メーカーの懸念の種となっている。機器メーカーは、かさばるコネクタを新たに付け加えることを警戒している。USB 3.0マイクロコネクタの全体幅は12.85mmにもなる(図2)。
高精細表示が可能な今日の携帯機器の多くには、USB 2.0マイクロコネクタに加えて、高精細ビデオストリーミング用のマイクロHDMI(High Definition Multimedia Interface)コネクタが組み込まれている。しかし、機器メーカーはマイクロHDMIコネクタを組み込まず、その代わりにMHL(Mobile High definition Link)による高精細ビデオストリーミングを実現することが可能だ*3)。MHLは、2010年に提案されたモバイル向けの映像・音声用インタフェースであり、モバイル機器を高精細テレビや外部ディスプレイに直接接続できる。MHLは、接続形式に制約がないので、USB 3.0を音声映像信号の伝送に利用でき、マイクロHDMIコネクタを追加する必要がない。
*3) MHLは規格上、USBコネクタの一部端子を用いて映像データを伝送できる。
USB 3.0マイクロコネクタは、USB 2.0とHDMIのコネクタを一緒にした場合と比べて小型だ。マイクロHDMIコネクタは幅6.4mm、USB 2.0マイクロコネクタは7.8mmだ。これら2個のコネクタを使用した時に必要な幅は、間隔を空けることを考慮するとほぼ15〜16mmになり、これはUSB 3.0マイクロBコネクタに比べ約25%大きい。その結果、モバイル機器メーカーは、多機能なUSB 3.0マイクロBコネクタを1個だけ使用することで、高速コンテンツ転送と充電、MHLによる高精細ビデオストリーミングが提供でき、エレガントな設計が実現できる。
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