携帯型機器にこそ役立つ「USB 3.0」、Wi-Fiではダメなのか:高速シリアルインタフェース技術(3/5 ページ)
モバイル機器にどのようなインタフェースを備えればよいのか、機器設計者の腕の見せ所だ。考え得るインタフェースをずらりと並べる手法もあるが、小型化を考えると得策ではない。USB 3.0はデータ転送速度が高く、電力を送る機能もある。HDMIやWi-Fiと比較したUSB 3.0の利点や欠点を紹介する。
転送速度とストレージ速度の関係とは
モバイル機器の多くは、ストレージにSDメモリーカードや、組み込みメモリ仕様であるeMMC(Embedded MultiMediaCard)を使用している。SDメモリーカード規格Ver.2.0が規定する最大転送速度は、25Mバイト/秒であり、eMMC Version 4.3規格では最大52Mバイト/秒である。いずれもUSB 3.0の最大データ転送能力を使い切ることができない。
しかし、データ転送速度にこうしたミスマッチがある状況も、新しいSDメモリーカード規格Ver.3.0の登場により、バス転送速度が104Mバイト/秒に高まることで変わる。同様に、eMMCの最新規格も200Mバイト/秒へアップグレードした*4)。SD3.0カードは市販されており、マイクロSDタイプの登場も間もなくだ。新しいeMMC規格に対応したフラッシュメモリもすぐに本格的な生産段階に入るだろう。
*4) 電子部品関連の標準化団体であるJEDEC Solid State Technology Associationは、2012年6月にJESD84-B451(eMMC Version 4.51)を発表した。
USB 2.0は現状のストレージ規格へ適合しているとはいえ、性能面ではギリギリのレベルにある(図3)。UHS(Ultra High Speed)IIやUFS(Universal Flash Storage)*5)をベースとするデバイスは、2012年末にも市場投入される見込みである。つまり、USB 2.0がデータ転送ラインの中でボトルネックになるのも、もうすぐだ。機器メーカーがストレージを最大限に高速化するには、新規の設計にUSB 3.0を採用することが不可欠になる。
*5) UHSは、SDアソシエーションが定めたバスインタフェースの規格。UHS-Iは、SD Version 3.01に対応し、バススピードは50Mバイト/秒または104Mバイト/秒、UHS-IIは、SD Version 4.0に対応し、バススピードは156Mバイト/秒または312Mバイト/秒。UFSはJEDECが2011年2月に発表したフラッシュストレージ向けの仕様。データ転送速度は300Mバイト/秒。
図3 データ転送速度の変遷 インタフェースの革新に伴って、今日のストレージ規格の定める高速なデータ転送速度(図中青色の領域)はUSB 2.0ではサポートできない。縦軸はデータ転送速度(Mバイト/秒)、横軸は年。
モバイル機器で利用するデジタルコンテンツの量は、高精細ビデオ録画機能の普及に応じて増え続けるはずだ。10分間の家庭用ビデオの容量は、簡単に数Gバイトに達する。今日のユーザーは、こうしたムービーを編集や共有、再生のためにPCに転送するだろう。USB 2.0では相当に大きな負荷になるが、5Gビット/秒に対応したUSB 3.0 SuperSpeedモードならば、最短の待ち時間ですむ。
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