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携帯型機器にこそ役立つ「USB 3.0」、Wi-Fiではダメなのか高速シリアルインタフェース技術(4/5 ページ)

モバイル機器にどのようなインタフェースを備えればよいのか、機器設計者の腕の見せ所だ。考え得るインタフェースをずらりと並べる手法もあるが、小型化を考えると得策ではない。USB 3.0はデータ転送速度が高く、電力を送る機能もある。HDMIやWi-Fiと比較したUSB 3.0の利点や欠点を紹介する。

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RAID技術が生きる

 保存したいデータが増え続ける状況に対応するため、携帯電話機やタブレットを設計するメーカーは、スループットを増強しようとしている。RAID(Redundant Array of Independent Disks)技術の適用を検討中だ。RAID 0方式を使用すれば、大量のデータを2台のSDやeMMCのデバイスに同時に自動的に分散書き込みできる。RAID 0とUSB 3.0を組み合わせると、ストレージデバイス側の最大スループットを実質的に倍増できるとともに、USB 3.0の転送速度をより有効に利用できる。

 今日、8Gバイトの映像をUSB 2.0が組み込まれた携帯電話機から取り出すには、18Mバイト/秒の速度でも、7分以上かかる。USB 3.0であれば、データ転送のボトルネックがなくなり、ストレージデバイス側のピーク限界に相当する速度で転送可能になる。つまり、USB 3.0ポートとRAID 0構成の2台のストレージデバイスをサポートする内部ブリッジが、ストレージデバイスの最高速度で動作することになる。この手法で到達できる速度は、現状では約150〜200Mバイト/秒だ。8Gバイトのムービーの転送時間が41秒に減少する計算だ(図4図5)。


図4 USB 3.0は理論的には600Mバイト/秒に達するデータ転送が可能であり(図中左側(a)の最下段)、従って、8Gバイトのファイルを転送する時間は理論上14秒以下になる(図中右側(b)の最下段)。実際には、ストレージの書き込み速度がデータ転送速度を制約する。内部ブリッジとRAID 0を利用すると、ストレージ側の速度が150〜200Mバイト/秒に高まり、8Gバイトのファイルの転送時間が41秒になる。


図5 内部ブリッジの構成例 米Cypress SemiconductorのUSB 3.0ストレージコントローラLSI「Benicia」の構成を示した。図左端にあるモバイル機器のアプリケーションプロセッサとの間は、プロセッサインタフェースで接続する。Benicia内部でRAID 0構成を提供するため、機器設計者は図下に示したストレージ(SDXCやeMMCに対応したメモリデバイス)と接続するだけでよい。

 USB 3.0は、機器の製造コストの引き下げにも役立つ。多くの携帯機器メーカーは工場での製造段階で、USBを利用してアプリケーションソフトウェアや音楽、ムービーなど各種コンテンツを機器にプリロードしている。スマートフォンのOSや内蔵コンテンツの量は2Gバイト以上に達する。USB 3.0を使えばUSB 2.0利用時に比べ、プリロードを10倍高速化でき、製造プロセスの効率化と大幅なコストダウンが可能になるからだ。

コンテンツの同期に役立つWi-Fi

 クラウドコンピューティングの分野では、「iCloud」や「Microsoft SkyDrive」「Dropbox」など多数のクラウドサービスが利用できる。ユーザーは、PCを経由することなく、ワイヤレス通信で大量のデータを同期できるようになった。

 モバイル機器にとって有線インタフェース技術が必要かについては議論がある。米IMS Researchの調査によれば、無線インタフェースであるWi-Fiはスマートフォンやタブレットの93%に採用されているという。ケーブルを接続しなくてもすむというワイヤレスの利便性は日常生活で計り知れないほど大きい。外出先のスターバックスでインターネットに接続したり、航空機に搭乗する直前にメールを送信したり、1台の機器で写真を撮り、直後に写真をクラウドサービス経由で別の機器に表示したり、といったさまざまな使い方が可能になった。

 Wi-Fi規格の最新版*6)であるIEEE 802.11nは、MIMO(Multiple Input Multiple Output)に対応する。MIMOでは、複数アンテナの連携効果により単一アンテナの場合に比べて受信感度が高まる。また、802.11nは40MHz幅のチャネルによりスループットが増強されており、さらに、混雑の少ない5GHzのISM(Industrial/Scientific/Medical)帯も利用可能だ。802.11nの理論転送速度は600Mビット/秒。USB 3.0の5Gビット/秒に釣り合うほどではないが、モバイル機器とPCの間でのコンテンツの移動には十分だ。

*6) 次期版であるIEEE 802.11acはドラフト版3.0が公開されており、2012年内にも規格策定が完了する見込みである。

 とはいえ、こうした802.11nの利点もモバイルシステムの設計では、十分には役立たない。600Mビット/秒という最大転送速度は理想条件下でしか得られない。40MHz幅のチャネルが4系統の空間ストリームを占有できるという理想条件だ。

 空間ストリームのおのおのに対し1系統のアンテナとA-Dコンバータが必要なので、モバイルシステムのメーカーにとって4系統全てを機器に組み込むのはコスト効果が悪い。アンテナ複数化の効果を得るには各アンテナ間に一定の間隔をもたせることも必要だ。これは、小型化が進むモバイル機器には厳しい条件だ。さらに、混雑の激しい2.4GHz帯では40MHz幅のチャネルの利用が現実的でないことも多い。この帯域は、Bluetooth機器や電子レンジの輻射、その他の一般的な無線(RF)機器などで既に満杯だ。その結果、モバイル機器で実際に利用可能なWi-Fi帯域は著しく狭くなる。

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