携帯型機器にこそ役立つ「USB 3.0」、Wi-Fiではダメなのか:高速シリアルインタフェース技術(5/5 ページ)
モバイル機器にどのようなインタフェースを備えればよいのか、機器設計者の腕の見せ所だ。考え得るインタフェースをずらりと並べる手法もあるが、小型化を考えると得策ではない。USB 3.0はデータ転送速度が高く、電力を送る機能もある。HDMIやWi-Fiと比較したUSB 3.0の利点や欠点を紹介する。
無線を使っても充電用ケーブルが残る
無線インタフェースのWi-Fiでは、有線インタフェースで給電機能を備えるUSB 3.0とは違って、機器の電池を充電できない。モバイル機器とPCの間でデジタルデータをワイヤレス転送する際、モバイル機器を充電器に接続するか、PCにUSB接続していない限りは、機器側の電池残量が減ってしまう(図6)。そのため、転送データ量が無視できるほど少量でない限りは、Wi-Fiを利用したとしても、モバイル機器で完全なコードレス同期を実現するのは不可能だ。Wi-Fiはインターネットの閲覧やメールの送信などには最適だ。しかし、大容量コンテンツを高速転送するには、良い選択肢ではない。USB 3.0は、機器間の接続に適していることや高速であること、機器の電池を充電できることから、しばらくの間、モバイル機器でWi-Fiと併用されるだろう。
図6 Wi-FiとUSB 3.0の比較 モバイル機器とPCの間でデジタルデータをワイヤレス転送する際、機器を充電器に接続するか、PCにUSB接続していない限りは電池の残容量が減ってしまう(a)。USB 3.0は、機器間の接続に適しており、高速で、電池を充電する機能を備えていることから、しばらくの間、モバイル機器でWi-Fiと併用されるだろう(b)。
USB 3.0がモバイル機器にとってますます重要な技術になることは間違いない。だが、USB 2.0が収めた成功に匹敵するには幾つかのハードルを越えなければならないことも確かだ。USB 3.0はUSB 2.0よりも高い周波数で動作するので、信号の品質やケーブル長のような新たな課題が生じる。しかしながら、こうした課題も以下に示すような基準となる設計を利用することにより解決できるだろう。
現状、USB 3.0を搭載したPCはまだ少ない。そのため、モバイル機器がUSB 3.0に対応していても、ほとんどのPCとはUSB 3.0で拡張された新機能を生かした形で接続できない。だが、2012年に、Intelの最新CPUであり、USB 3.0ホスト機能を内蔵した「Ivy Bridge」が市場投入されたことから、USB 3.0コネクタを標準装備するPCが増えていくだろう。
なお、初期のUSB 3.0搭載機器の開発者はデバイスドライバソフトウェアを自社開発しなければならなかったので、余分な負担と設計の複雑化を強いられていた。Microsoftが最新OSの「Windows 8」において安定性が高いUSB 3.0ドライバを提供すると発表したことから、今後は、ユビキタスでシームレスなUSB 3.0へのサポートが広く提供され、入手可能になるだろう。
USBは、今もなお、あらゆるモバイル機器に対し最も融通性のある接続方式だ。USB 3.0は、高い転送速度、電池充電機能など明確な利点をもつことから、大量データの転送や高精細ビデオストリーミングなどに理想的だ。USB 3.0は、USB 2.0からユーザーの高い認知度を引き継ぐとともに、機器メーカーが実装の際に利用できる各種要素をハードウェアからソフトウェアに至るまで幅広く提供する、業界の供給体制が構築されるだろう。
モバイルシステムメーカーにとって、今が次世代モバイル機器にUSB 3.0を導入すべき時だ。
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