SEPIC(セピック)
SEPICとは、昇降圧型に対応可能なDC-DCコンバータ・トポロジーの一つ。Single Ended Primary Inductor Converter の頭文字をとった名称で、日本語では「セピック」と発音されることが多い。回路のアイデア自体は30数年前から存在していたが、広く普及し始めたのは10年ほど前からである。その理由は、回路を構成する部品点数が多く、回路動作も複雑な点にあった。従って、コストが上昇してしまう。ただし、半導体技術の進歩で、SEPICに対応したDC-DCコンバータ制御用ICの実用化が始まっており、最近では容易に実現することが可能になっている。コスト上昇分もかなり抑えることが可能だ。
SEPICコンバータのメリットは、一つの回路で昇圧と降圧の動作が実現できることに加えて、入力電圧に現れるリップル成分が非常に小さいことが挙げられる。ただし、出力電流に重畳されるリップル成分は比較的大きい。このため、消費電流が比較的少ない携帯型電子機器には最適なトポロジーと言えるが、大電流用途には向かない。さらに、出力電圧の極性が入力電圧と同じこともメリットの一つに挙げられるだろう。
フライバック+コンデンサ=SEPIC
SEPICコンバータの回路構成は、一般的なフライバック(flyback)・コンバータに似ている。違いは、トランスの1次側巻線と2次側巻線の間にコンデンサ(カップリング・コンデンサ)が直列に挿入されている点だけである(図1)。従って、フライバック・コンバータと同様に、昇降圧動作が可能な上に、スイッチング素子のデューティ比(オン/オフ比)を調整することで出力電圧を制御することが可能だ。
図1 SEPICコンバータの回路構成
(a)はフライバック(flyback)・コンバータの回路構成。(b)は、SEPICコンバータの回路構成である。フライバック・コンバータにカップリング・コンデンサを加えることで、SEPICコンバータに変更することが可能だ。(c)は、SEPICコンバータの基本回路構成である。二つのインダクタを、コンデンサを介して接続した構成になっている。このため、エネルギーが出力側から入力側に逆流することはない。
回路構成上の欠点としては、直列に接続したカップリング・コンデンサに大きなリップル電流が流れるため、そのコンデンサの等価直列抵抗値(ESR:Equivalent Series Resistance)によっては、変換効率が大きく低下してしまうことが挙げられる。ただし、最近では、積層セラミック・コンデンサの大容量化が著しく、ESRが小さい大容量コンデンサが入手できるようになっている。このため、変換効率の低下幅を小さく抑えることが可能だ。
なお、SEPICコンバータの回路構成によく似たトポロジーにCuk(チュークと発音)コンバータがある。ただし、このコンバータは、入力電圧と出力電圧の極性が変わってしまうという課題を抱えている。つまり、SEPICコンバータは、Cukコンバータの持つ課題を解決したものと言うことができる。
オンライン・ツールが設計を支援
一般に、SEPICコンバータの設計は難しい。部品点数が多い上に、回路動作が比較的複雑だからだ。ただし、設計支援ツールを使えば、設計難易度を格段に下げることができる。例えば、テキサス・インスツルメンツ(TI)が提供している「WEBENCH® System Power Architect」である(図2)。これを使えば、SEPICのほか、降圧や昇圧、昇降圧、反転、フライバックなどの方式を採用した電源システムを短時間で設計できる。しかも、無償で利用可能だ。
テキサス・インスツルメンツのWEBENCH®オンライン設計支援ツール
提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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