マイコンが誕生したのは1971年のこと。それから40年あまりの間に、マイコンは急速に進化と発展を続けてきました。今回はその歴史を見ていきたいと思います。
マイコンの発明者は誰?
マイコンは、数mm角の薄板状のシリコンチップに、コンピュータに必要な電子回路の機能を搭載したものです。1958年にTI(テキサス・インスツルメンツ)でIC(集積回路)が発明されて、多数の部品を組み合わせた電子回路を、ごく小型のチップに集積できるようになりました。
微細化技術の進化とともに、ICに搭載可能な素子数は増加していきます。1960年代後半には1000個以上のトランジスタを集積できるようになり、256ビットSRAMや1KビットDRAMなどのLSI(大規模集積回路)が登場しました。この程度の規模では本格的なコンピュータはできませんが、基本的な四則演算などは実現可能です。そこで、当時急速に普及し始めていた電卓を小型・低価格化するために、新しいLSIを開発したいという要求があちこちで生まれてきました。
日本の電卓メーカであるビジコン社から委託を受けてインテルが開発したLSIが、世界初のマイクロプロセッサ4004です。インテルのT.ホフ、F.ファジーン、ビジコンの嶋正利は4004の発明者として有名です。
一方、TIでは小型電卓を自社開発しており、1971年に世界初の1チップ・マイコンを開発しました。TIではこのとき1チップ・マイコンの基本特許(US特許4074351)を取得しており、G.ブーンとM.コクランの2人が1チップ・マイコンの発明者です。
マイクロプロセッサと1チップ・マイコン
ほぼ同じ時期に電卓用として開発された4004と、TIの1チップ・マイコンは、構成に大きな違いがありました。
4004はプログラム格納用のROM、一時記憶用のRAM、入力装置や出力装置を接続するI/Oをそれぞれ外付けのLSIとして、全体を制御するCPU(中央処理装置)の部分だけを1個のLSIにまとめました。これはマイクロプロセッサと呼ばれます。
マイクロプロセッサはCPU機能に専念できるので高性能化しやすく、ROM、RAM、I/Oを必要に応じて拡張できるので大規模システムの構築に適しています。マイクロプロセッサは、その後パソコン、サーバや高性能機器向けに発展していきます。
TIでは、ROM、RAM、I/O、CPUを1個のLSIに集積した1チップ・マイコンのTMS1000シリーズを発売しました。小型・低価格の機器を作るにはこの方が有利です。電卓用マイコンとして大ヒットするとともに、家電、自動車、産業機器などあらゆる分野で組み込み用マイコンとして広く使われるようになりました。1チップ・マイコンは、MCU(マイクロ・コントローラ・ユニット)とも呼ばれています。現在、代表的な製品の一つがTIのMSP430™です。
図5 マイクロプロセッサと1チップ・マイコン
マイクロプロセッサは、ROM、RAM、I/Oを必要に応じて増設できるので、大規模システムの構築に適する。一方、1チップ・マイコンは、CPU、ROM、RAM、I/Oが1個に統合されるので、小型・低コスト・低消費電力を実現しやすい。
アーキテクチャの変遷
最初に誕生したマイコンは基本のデータ幅が4ビットでしたが、すぐに8ビット、16ビットと増えていきます。1980年代中頃には、パソコンも32ビットが登場します。この頃にはCPUの動作速度も高速になり、メモリも大容量になって、パソコンではC言語などの高級言語でプログラミングするのが一般的になります。しかし、1チップ・マイコンではまだ8ビットが主流で、アセンブリ言語が主に使われていました。
この頃から、命令体系を単純化して、そのかわりチップサイズの縮小や動作クロックの高速化を可能にしたRISC(縮小命令セットコンピュータ)の考え方が普及していきます。1990年代中頃以降は、1チップ・マイコンでも32ビットやRISCのものが多くなっています。
2000年代中頃には、1個のCPUの高速化には限界が見えてきたことから、チップに複数のCPUを搭載するマルチコアが普及してきました。1チップ・マイコンでもハイエンドものはマルチコア化が始まっています。
TIが開発した1チップ・マイコンはその後、急速な進化を遂げ、小型・低消費電力ファミリーから、高性能・高信頼性ファミリーまで、さまざまな製品がラインナップされています。ユーザーは目的にあわせて最適なマイコンを選ぶことができるようになりました。
※MSP430はTexas Instruments Incorporatedの商標です。その他すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。
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マイコン基礎の基礎 第2回 「これだけあればマイコンが動く」は、11/26(月)の公開を予定しています。
提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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