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1セル乾電池で白色LED をフラッシュ点灯Design Ideas ディスプレイとドライバ(2/2 ページ)

一般に、白色LEDの順方向電圧は3〜5Vであるため、公称電圧が1.5Vのアルカリ乾電池1セルで駆動するのは難しい。1Vといったより低い電圧では、白色LEDの駆動はさらに難しくなる。だが、今回は、1Vと低い電源電圧で白色LEDをフラッシュ点灯(点滅)させる回路を、個別半導体素子で実現する方法を紹介する。

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LEDが消灯すると……

 LED1が消灯するとVPは急速に低下し始め、C1は放電を開始する。この放電の時定数は、主にQ1のベース電流とR2、C1で決まる。LED1は、VB1がシュミット・トリガー回路の下側しきい値電圧(VTL)に達するまで消灯状態を維持する。VB1がVTLを下回るとQ1がオフになり、Q2がオンする。すると昇圧回路が再び動作を開始し、LED1を点灯する。R1、R2、およびC1の値を十分に大きくしておけば、LED1は長い周期でフラッシュ点灯する。例えば、R1とR2の値をそれぞれ約1MΩ、C1の値を1μF以上とすれば、1秒よりも長い周期で白色LEDを点滅させられる。ただし、R1とR2は、前述のようにQ1のベース電圧VB1を設定するための抵抗分圧器としても機能する。このためR2の値はR1よりも十分に大きくしておく。C1が充電されたときに、VB1がシュミット・トリガー回路の上側しきい値電圧よりも確実に高くなるようにするためである。この点にだけ注意しておけば、所望の点滅周期を得るためのR1とR2、C1の値は実験によって容易に見つけられる。

 VPの値はC1の充放電に大きな影響を及ぼす。さらにVPの値は、電池の端子電圧VSによって変化してしまう。ただし、VB2の値もVPと同様にVSによって変化する。このため、VPのVS依存性はある程度相殺される。それでもなお、白色LEDの点滅周期と点灯時間/消灯時間の割合(デューティー比)は、1セル乾電池の端子電圧が低下するにしたがって若干変化してしまう。

 例えば、R1が2.2MΩ、R2が10MΩ、C1が1μFとする。VSが1.5Vのとき、点滅周期は約1.92s、デューティー比は66%である。VSが1Vに低下すると、点滅周期は約1.33sと短く

なり、デューティー比は44%に下がる。シュミット・トリガー回路の下側/上側しきい値電圧であるVTL/VTUは、VSが1.5Vのときに約0.7V/約1.2Vで、VSが1Vになると約0.6V/約0.8Vに低下する。

発光強度は順方向電流の平均値に比例

 白色LEDの発光強度は順方向電流の平均値に比例する。従って発光強度は、インダクターL1を流れる電流のピーク値ILPEAKと白色LEDを流れる電流パルスの持続時間によって決まる。L1が飽和しない限り、ピーク電流の値はQ5が対応できるコレクタ電流の最大値に大きく依存する。VSが一定の場合には、コレクタ電流の最大値はQ5の順方向電流利得に依存する。また、R8の値もコレクタ電流の最大値に若干影響を与える。

 R8を適切に選択すれば、VSが低くなった場合にも十分な発光強度を得られる。実験でR8の値を変化させて、採用する白色LEDの発光強度を最大にできる値を選択すればよい。ただしピーク電流は、VSが最大値のときに白色LEDの最大定格電流を超えないように注意する。

 L1の値はそれほど重要ではない。100μH〜330μH程度の値を選択すれば良好な性能と効率を得られる。トランジスタの品種も重要ではない。試作した回路では、電流利得が中〜高程度の汎用小信号デバイスを使って十分な動作特性を得られた。可能であれば、Q3とQ4、Q5は低飽和型トランジスタを用いるのがよい。C2は回路を動作させるのに必須の部品ではないが、Q2のベース端子におけるスイッチング雑音を抑えるのに役立つ。C4の主な役割は電荷を蓄えることである。

 LED1点灯時に、C1を充電するための電圧源となるVPを安定に保つ役割を果たす。充電電流はそれほど大きくない。このためC4の値はかなり小さくできる。10nFが適当であろう。

 注意が必要なのはC4の接続方法である。Q5のコレクタ端子にかかるフライバック電圧を整流用ダイオード経由でC4に印加する接続方法は使わない。図1に示したように、C4は必ずD1とLED1の結線部に接続する。

 この接続方法を使う第1の理由は、VSからL1とR1を通ってQ1のベース端子に至る経路の途中に白色LEDを配置できるからである。


写真はイメージです

 通常、白色LEDには最小でも3V程度の順方向電圧がある。この順方向電圧による電圧降下分を利用することで、前述の経路によってQ1がオンしてしまうことを防止できる。こうしないと、白色LEDが消灯したまま回路の状態が固定されてしまう可能性がある。

 第2の理由は、VPはVSよりダイオード1個の電圧降下分だけしか高くならないからである。すなわち、C1の充電電流を一定とすると、R1の値を小さくできる。昇圧回路のオン/オフは、Q4のベース電流を供給/遮断することでも制御できるように見えるだろう。もしそれが可能であるならばQ3は不要になる。しかし、Q4のベース電流を制御する方法は発振の恐れがあるので使えない。

0.9Vという低い値でも回路が始動

 いったん昇圧回路を動作させると、Q4のベースに直流バイアスを印加しなくても、帰還電流がC3とR10を経由してQ4のベースに戻ってくることで発振状態が維持されてしまう可能性がある。このため、昇圧回路をオン/オフするために採用できるのは、図1のようにQ3を制御する方法だけである。

 試作した回路では、VSが0.9Vという低い値でも回路が始動し、白色LEDの点滅を維持できた。ただしこの電圧では白色LEDの発光強度は弱かった。VSを1.5Vに設定すると白色LEDは良好な発光強度を示した。さらにVSを1Vに下げても実用的な発光強度を確保できた。

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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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