フィルタレス(クラスDアンプ)
フィルタレスとは、クラスD(D級)アンプにおいて、出力部のフィルタが不要なこと。もしくは、その回路方式(構成)のこと。現在(2014年3月末)のD級アンプは第2世代品であり、出力が1W程度以下の製品(IC)ではフィルタレスは当たり前の回路方式になっている。出力が数Wを超える場合は、EMI(Electro-Magnetic Interference)の影響を少なくするためにフィルタを使用する必要があるケースが多い。
2つのPWM変調回路構成を採用
しかし、かつて(第1世代)のクラスDアンプでは、出力部にフィルタを接続することが必須だった。理由は、プラス出力のパルスとマイナス出力のパルスが互いに逆位相であるからだ。負荷のスピーカには入力信号がない状態(デューティ比が50%のとき)でも電流が流れることになり、効率が低下してしまう(デューティ比が50%の場合は平均電流がゼロとなるため無音である)。このためLCフィルタを用いて、PWM信号をアナログ信号に変換してスピーカに供給することでスピーカに常にスイッチング電流が流れることを避けていた。
図1 フィルタレスを実現したクラスDアンプ
フィルタレスを実現したクラスDアンプの例である。PWM変調回路向けにコンパレータ(比較器)を2個用意し、プラス出力とマイナス出力のPWM信号を同位相で構成する回路方式を採用した。こうすることでフィルタレスを実現した。
第2世代品において「フィルタレス」を実現できたのは、回路方式を改善したからだ。PWM変調回路向けにコンパレータ(比較器)を2個用意し、プラス出力とマイナス出力のPWM信号を同位相で構成する方法である(図1)。そして、プラス出力とマイナス出力のPWM信号のパルス幅の変更方向を互いに逆になるようにすることで出力を制御する。こうすることで、インダクタ(実際には負荷となるスピーカ)に流れる電流をパルス幅の差の時間のみで少なくし、スピーカのインダクタ成分でパルス成分を積分し、スピーカに流れる電流がパルスを積分した電流となることでアナログ信号を再生させている。このため小電力出力用では前述のフィルタを不要にすることが可能となる。しかし、出力電力が大きくなり。スイッチングの出力振幅が大きくなりEMIが大きくなった場合はフィルタが必要となる。
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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年3月31日
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