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SPICE応用設計(その2):フーリエ解析SPICEの仕組みとその活用設計(13)(1/3 ページ)

前回に引き続き、オーディオアンプの設計を例にとりながら、SPICEの設計への応用を紹介していきます。今回は、具体的な歪みの値を調べる「フーリエ解析」を解説します。

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 前回に引き続き、オーディオアンプの設計を例に挙げながら、実際の設計におけるSPICEの応用方法を説明していきます。

 今回は、図1の回路でRBIAS=107Ωとしたところからの検討を続けます。


【図1】基本オーディオアンプ回路図

 前回は、一応の信号が得られる段階まで検討を進めることができましたが、音質に影響を与える出力電圧の歪みの大きさや高次高調波成分の様子はどうなっているのでしょうか?


【図2】RBIASの効果確認

 この種の検討に有効なのがSPICEのフーリエ解析機能です。過渡解析で得られた信号をスペクトル(周波数成分)に分解し、高次高調波の大きさを調べることができます。

 解析対象波形として図2にRBIASを1μΩと107Ωに切り替えた時の出力電圧V(out)の波形を示します。

 解析条件は、

  • VSIG=4.4V
  • V1=5.56V

です。

 図2の波形には両者に明らかな差がありますが、具体的な歪みの値を調べるためにフーリエ解析を実行し、その結果を図3に示します。
(条件:解析時間1mS、刻み時間200nS


【図3】バイアス抵抗とフーリエ変換波形

 図3を一読しただけでもRBIAS=107Ωの方が、高次高調波が少なく低歪と予測できます。なお、より具体的な値を望む場合には多くのツールではlog(out)ファイルから振幅と位相を読み取ることができます。

 手持ちのいくつかのツールを使って、このようにして読み取った高調波成分と歪率を表1に示します。

 解析条件をそろえるために半導体のSPICEモデルも含めて解析(cir)ファイルは全て同じものを読み込ませていますが、いずれのツールもFFTアルゴリズムが同じなのか似たような値が得られています。

  ツール 基本波 3次成分比*1) 5次成分比*1) 総合歪(%)*2)
R=1μΩ SPICE3F5 1 (3.41459V) 8.58398E−2 4.57626E−2 10.2881%
WinSpice3 1 (3.41459V) 8.583968E−2 4.576242E−2 10.288%
PSpice 1 (3.416V) 8.603E−2 4.609E−2 10.339%
TopSpice 1 (3.415V) 8.58E−2 4.571E−2 10.281%
LTspice 1 (3.416V) 8.604E−02 4.609E−02 10.338537%
R=107Ω SPICE3F5 1 (3.96611V) 1.47302E−3 7.86866E−4 0.883225%
WinSpice3 1 (3.966106V) 1.473018E−3 7.868651E−4 0.883225%
PSpice 1 (3.967V) 1.479E−3 7.933E−4 0.885%
TopSpice 1 (3.966V) 1.472E−3 7.859E−4 0.8833%
LTspice 1 (3.967V) 1.481E−03 7.935E−04 0.884647%
【表1】高調波成分の比較
*1)成分比は基本波に対する相対比率です。
*2)歪率は出力ファイルに記載の値を使用。

 表1からバイアス抵抗RBIAS=107Ωの時は歪率が1%を下回っていることが分かります。なお、高調波成分がピーク値で計算されているのに対してLTspiceの波形ビューワーは実効値を表示していますのでLTspiceを使われる方は気に留めておいてください。

(お知らせ:LTspiceの読み取りデータに関して、初掲時から一部データを変更しました。2014/07/17)

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