ファンに振り回された!?――ユニット電源の修理(1):Wired, Weird(4/4 ページ)
今回は国産のユニット電源の修理例を報告する。電源の故障は設計不良が原因の場合が多い。だが今回の修理は、非常に良い設計の電源で、いつもと少し違った故障原因が潜んでいるようだ。
正常だ……。
あれれ???
どうも、図3のブロック図に記載されていないシャットダウン要因があるようだ。
もう1つのシャットダウン要因
一次側の基板で温度センサーが接続されている回路のパターンを確認したら、温度センサーはDCファンのコネクタの2ピンに接続されていた。つまりDCファンのセンサーと温度センサーが直列に接続されており、DCファンのセンサーと温度センサーが同等に扱われているということになる。つまりファンの回転不良のアラームが放熱板の過熱検知と同じでインターロックに使われていることが分かった。
DCファンは中国製だったが、型名からカタログや技術資料を探したが、見つけることはできなかった。このためDCファン単体にDC12Vを接続し、ファンのセンサー出力を確認した。DC12V電源を接続するとファンの回転が始まったが数秒で回転が止まった。その後、数秒後にファンが回転してはまた、止まるという現象だった。なお、ファンのセンサー出力はOFFのままだった。
つまりDCファンが破損してファンセンサー出力がオンにならないため5V出力がシャットダウンされていると判断された。これを確認するためDCファンのコネクタでセンサー出力の2ピンと0V端子を短絡して、AC100Vを通電したらDC5V出力が連続出力され電源LEDも点灯した。
修理完了!
ようやく故障原因が判明した。DCファンの故障が5V出力の出ない理由だった。いやいや、まさに灯台元暗しだ。もう1台の日本製のEWS300も同じ結果でファンのセンサー出力を強制的にオンにすることで5V電源が正常に出力された。これで修理は一件落着だろう。修理の依頼元へDC12Vのセンサー付きファンで、ファンの回転時に出力がオンする仕様のものに交換するように連絡した。
ところが……。
その後、修理の依頼元から連絡があり、“日本製のEWS300には日本製のDCファンが搭載されており、そのファンのメーカーへファンに記載された型番を注文したら顧客仕様のファンだった。このため、そのメーカーの標準品ファンでのロックセンサー付きを注文した”と連絡があった。
さらに、2週間後に依頼元から連絡があり、“DCファンを交換したが、ファンは回転するけれども5V出力が出ない”という……。
今回は簡単な修理と思ったが、まだまだ落とし穴があるようだ。続きは次回に報告する。
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