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ラプラス素子(その1)SPICEの仕組みとその活用設計(23)(5/5 ページ)

過渡現象問題を解く時に必須となるラプラス変換/逆変換をSpice上で行うにはラプラス素子を用いて実行する方法がスマートです。今回から2回にわたって、いくつかのツールを使ってラプラス素子について説明、検証をしていきます。

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ラプラス素子のnfft値とWindow値

 表2のところでも簡単に触れましたが、ラプラス素子の畳み込み積分には「全体の波形をどのように分割するか?」という調整項目(問題?)があります。

 LTspiceのHelpファイルによれば調整項目としてWindow値とnfft値があり、それらの基本的な考え方は次の通りです。

  • 解析時間長がWindow値に関係します。
  • Window値の逆数が周波数分解能に関係します。
  • nfftは「最高周波数=nfft×周波数分解能」に関係します。つまり、
    nfft=最高周波数×解析時間です。

 インターネット上の情報を総合するとLTspiceのラプラス素子は次のように計算しているようです。
(筆者の個人的な見解ですがその他のツールも大きくは変わらないと思います)

  1. 最初に基準インパルス応答波形を求めます*3)
  2. 基準インパルス応答波形をFFT(高速フーリエ変換)に掛けて周波数成分を検出します
    • この時に採用するインパルス応答波形の解析時間長がWindow値です
    • Window値の逆数は最低周波数(=周波数分解能)です
  3. したがって、最低周波数のnfft倍はFFTで出力される最高周波数成分になります
  4. 基準インパルス応答波形をnfft値で分割しメモリに記憶します
  5. 与えられた入力波形のレベルと基準インパルスの比率を計算し、瞬時、瞬時の出力波形を合成します

*3)nfftが設定されていない場合は最初のインパルス応答に含まれる高次周波数成分を参考にnfftを自動で設定しているようです。また、基準インパルス応答波形を求める手法にはいくつかの方法があるようです。

 ここまで説明してきたようにラプラス素子を使用することで周波数特性と過渡応答特性を同じ回路図で解析できることが分かりましたが、V&Vを考えるとnfft値とWindow値が結果にどのような影響を与えるか検証しておく必要があります。

 次回はこのラプラス素子を使った解析結果の妥当性について検証していきたいと思います。

巻末コラム

参考:6式を部分分数に分解して各項に逆ラプラス変換を施すと次式を得ます。

 ここでL−1()は逆ラプラス変換を表しますが、この式は微分方程式から求めた2式と一致しています。


執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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