電源ICを使ったLEDの定電流駆動回路:Design Ideas ディスプレイとドライバ(2/2 ページ)
LEDが光源として注目を浴びている。従来に比べて、効率や信頼性が高い場合が多いからだ。スイッチング電源を使えば、バラスト抵抗を用いた電流の制限方法に比べてさらに効率を高められる。
LEDの駆動電流(IOUT)はIOUT=V5/R6で計算できる。ここでV5はIC2の5番ピンの電圧である。より高い駆動電流を出力するようにR6の値を変更すれば、定格が3Wや5WのLEDを駆動することも可能である。ただし、回路に使用する部品の最大定格電力を考慮する必要がある。定電流出力型の電源回路では、変圧器と回路部品の定格によって出力電圧が決まってしまう。
2〜8個のLEDを直列に接続した場合、LEDによる電圧降下はLEDが2個のときに約7V、8個のときに約28Vと大きく変化する。この電圧降下の大きさは変圧器の1次側に伝達され、スイッチング・レギュレーターIC(IC1)のVDD端子に印加する電圧と、IC1に集積されたパワーMOSFETにかかるドレイン‐ソース間電圧(VDS)を設定する。
帰還電圧は出力電圧に比例
図1では、次の3点に注意して変圧器回路を設計した。1つ目は、スイッチング・レギュレーターICのVDD端子に印加可能な電圧範囲が9〜38Vということである。2つ目は、スイッチング・レギュレーターICの許容消費電力が最大12Wということだ。3つ目は、パワーMOSFETのドレインに印加できる最大電圧である。ドレインには、入力電圧と巻線比によって決まる変圧器の出力電圧(NP/NS)・VOUTを足し合わせた大きさの電圧がかかる。これをスイッチング・レギュレーターICの定格である730V以下に抑えた。
2〜8個のLEDを駆動する場合には、VDD端子に印加される帰還電圧が出力電圧に比例することを考慮しておく必要がある。帰還電圧を制御できるように、変圧器の巻線比は、LEDの数が最も多い場合の出力電圧に合わせて選択する。LEDの数を減らせば、帰還電圧は小さくなる。
もし2個のLEDを想定して変圧器を設計すると、8個のLEDでは帰還電圧の大きさが4倍になるため、スイッチング・レギュレーターICの定格を超えてしまう可能性がある。変圧器の2次側とVDD端子側の巻線比は、2個のLEDを駆動する場合に、VDD端子の電圧が入力電圧範囲の最小値9Vになるように決める。LEDの数を増やすと、VDD端子の電圧は過電圧シャットダウンが機能する電圧(最小38V、標準42V)までLEDの数に比例して増加する。
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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。
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