USB 3.1/Type-Cのトランスミッタテスト:USB Type-Cの登場で評価試験はどう変わる?(3)(2/4 ページ)
今回は、「USB 3.1/Type-Cのトランスミッタテスト(送信品質評価)」について、テスト用フィクスチャを活用することで、より正確により早く測定/評価するための手法などについて述べる。
PreshootとDe-emphasis
PreshootとDe-emphasisが適用されたTx波形 (クリックで拡大)出典:USB-IF Universal Serial Bus 3.1 Specification Revision 1.0
ディエンファシス(De-emphasis)とは、送信信号において「111」など同じパターンが続く場合、送信側で2ビット目以降の振幅を小さくすることで、伝送ロスの影響を比較的少なくする手法である。振幅を小さくしなかった場合に比べて、受信後のアイパターンはより鮮明となり、「0」、「1」の信号を判別しやすくなる。さらに、「Preshoot」機能がUSB 3.1 Gen2から新たに追加された。信号が「0」から「1」へ、またはその逆に反転する時に、反転する直前ビットの振幅をわずかに大きくする作業を行う。USB 3.1 Gen2では、ディエンファシスとプリシュート(Preshoot)の両方を行うことにより、伝送信号の品質を高めるよう工夫されている。
ここで技術者が注意しなければならないのは、インタフェース規格が過渡期にある場合、複数の伝送ロスモデルが存在することである。市場でUSB 3.1 Gen2/Type-Cに完全移行するまでは、ケーブルの両端にType-CとType-AあるいはMicro-Bなど異なるコネクタが取り付けられた接続変換ケーブルが存在することになる。従来のGen1スピードのまま使用する場合であっても、互換性確保のためGen1の伝送ロスモデルはGen2より複雑になっている。特にHost機器については、従来のStandard Aコネクタでは10dBまでのロスが許容されていたが、Type-C搭載Hostは6.5dBと許容範囲が狭くなっている。送信品質評価作業を行う際には、変換ケーブルの種類など、さまざまな利用環境を想定した検証を行っておく必要がある。
テスト用フィクスチャを活用
ここからは、USB3.1/Type-CのTxテスト手法について紹介する。Txテストでは、DUT(Device Under Test、テスト対象デバイス)から出力された信号波形が、ケーブルや受信側機器内の伝送路を経由しても正しくアイが開くかどうかを試験する。この時、DUTが接続されたオシロスコープ内部で、ケーブルと相手機器側の伝送ロス(6dB+8.5dB)及び受信側のイコライザを模擬して演算し、オシロスコープ画面にアイパターンを表示する。アイパターンが規定内であれば、送信品質に問題がないと判断される。
USB3.1/Type-CのTxテストあるいはRxテストを行う際に、重要となるのが測定器との接続性である。DUTと測定器を接続するためのテスト用フィクスチャも幾つか発表されている。ここではフィクスチャの選択も含めて、技術者がテスト時に考慮すべき点を幾つか挙げる。まず、Type-C採用製品のテストでは、「DisplayPort 1.3」や「Thunderbolt 2/3」「MHL」など、USB 3.1以外のインタフェース規格に対応したテストが必要になる可能性がある。そのような場合は、USB3.1に限らずさまざまな規格の試験に対応できるセットアップを用意しておく必要がある。次に、使用するテストフィクスチャの特性である。USB3.1 Gen 2測定では帯域幅が最低16GHz、20Gbps対応のThunderbolt 3では最低30GHzが必要となるからだ。
セットアップなどテスト時の作業性も重要となる。Type-Cコネクタは表裏(上下)のないリバーシブル形状を採用しているので、テストも表裏両面に対して行う必要がある。手動でコネクタを反転させながらテストを行うと、その分手間が掛かり、ミスの原因になる可能性もある。また、第5回で詳しく述べる予定だが、Type-C搭載機器では、CCピンの状態でホスト側/デバイス側の区別やコネクタの表裏判別が行われるため、テストの際もCCピンを適切に設定しないとテストモードに入らない。テストを行う際には、CCピンの設定を簡単に切り替えられる機能があれば、手動でのコネクタの挿抜や反転を行う必要がなくなり、またテストの自動化・高速化が可能になる。
この他、Power Delivery(PD)テストや、現状でテスト仕様が確定していない規格のテスト、あるいはデバッグ機能などへの対応も考慮しておく必要がある。
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