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DCモーターの性能線図を理解して高効率駆動について考えてみようめざせ高効率! モーター駆動入門講座(3)(1/3 ページ)

今回は、ブラシ付きDCモーターの特長と性能線図を解説していこう。重要なポイントを押さえながら、誘起電圧の与える影響を理解し、高効率駆動のための印加電圧位相を考えよう。

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 前回は、モーターを扱う技術者であれば避けては通れない、高効率・長寿命を実現できるブラシレスDCモーターの動作原理、高効率駆動について解説した。3回目となる今回は、簡単に駆動できることで最も普及している、ブラシ付きDCモーターの特長および性能線図を解説する。その中の重要な4つのポイントから誘起電圧の与える影響をより深く理解することで、高効率駆動のためには印加電圧位相を考える必要があることに論点を当てる。

ブラシ付きDCモーターの概要

 小型モーターの代名詞、ブラシ付きDCモーター(通称DCモーター)については、皆さんも1度はお世話になったことがあると思う。最もイメージしやすいのがモーター付きプラモデル「ミニ四駆」(タミヤ)であるが、もう少し年齢が上の方であれば、水中モーターを石けん箱の裏に付けてお風呂で遊んだことがあるかもしれない。

 さて、「ブラシノイズが発生する」「寿命が短い」というレッテルを張られているDCモーター。実はその生産量は、2014年の小型モーター全体で約110億個の中の60%にもなるといわれている(富士経済調べ)。以前はおもちゃを始め、カセットテープやCDなどの音楽・映像機器のデータ記憶用途に多く採用されていたが、最近では高い品質を必要とする車載にも多く搭載されている。1台あたりの搭載数量も増え続けている(20個から多いものは100個とも言われている)が、なぜこれほどまでに重宝されるのだろうか。

 それは以下のDCモーターの特長に起因する。

  1. 直流電源を接続するだけで回転する
  2. プラス端子とマイナス端子を入れ替えるだけで逆転する
  3. 起動性がよく、制御しやすいシンプルな特性を持つ

 総じて、「扱いやすいモーター」といえる。

DCモーターの特性について

 その特徴をモーターの性能線図から見てみよう。

 定電圧を印加した場合、DCモーターの特性は図1の性能線図のように表記される。負荷トルク[mN・m]を横軸にとり、縦軸はそれぞれ、出力[W]、電流[A]、回転数[rpm]、効率[%]となっている。ここでの効率とは、モーターに加えた電気エネルギーが損失なくどれだけ機械エネルギーとして出力されたかを示している。

 ここで確認してほしいポイントは、[1]無負荷時回転数、[2]無負荷時電流、[3]拘束(起動)トルク、[4]拘束(起動)電流の4点である。DCモーターを使用しやすい理由の1つに、大きな起動電流を流すことで、起動時に最大トルクを発生できる(つまり起動性がよい)ことがある。また、負荷トルクに対して、モーターの回転数と電流が直線的に変化することにも着目してほしい。これは、モーターの回転数を制御するには、電流を制御すればよいということである。この特性はブラシレスDCモーターも同様である。


図1:DCモーターの性能線図(定電圧印加時)

 ではなぜ、起動時に1番大きなトルクが発生し、回転数が上昇するにつれて電流は下がるのだろうか。また、モーターの無負荷時の回転数はどうやって決まっているのだろうか。ここからはそれらの原理を解説していく。

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