連載
「Thread」のネットワークトポロジーと形成手順:IoT時代の無線規格を知る【Thread編】(3)(6/6 ページ)
ホームネットワーク向け無線規格として注目を集める「Thread」を解説する本連載。今回は、Threadのネットワークトポロジーとネットワーク形成手順の基礎について解説していく。
MLEメッセージ
Threadネットワークにアタッチしたデバイスは、ネットワークへの参加を維持するためにさまざまな情報が必要になる。MLEでネットワーク全体にネットワークの情報が配布され、リンクコストや隣接とのセキュリティフレームカウンターの交換も行われる。
MLEメッセージは、以下の情報を交換や配布を行う*)
- 隣接デバイスの16ビットショート、64ビットEUI64ロングアドレス
- スリープ機能付きエンドデバイスの場合、スリープサイクルの情報を含めたデバイスの機能情報
- 隣接のリンクコスト(ルーターの場合)
- セキュリティ情報とデバイス間のフレームカウンター
- Threadネットワーク内の全てのルーターに対する経路コスト
- 無線チャンネル、PAN ID、MACで使用されるネットワークデータのアップデート
*)MLEメッセージは、参加デバイスが必要なセキュリティ情報を得る際を除いて暗号化される。
DHCPv6
DHCPv6(RFC3315)は、UDBベースのクライアント‐サーバプロトコルでネットワーク内のデバイスの構成を管理する。DHCPv6はDHCPサーバの要求にUDPを使用する。
ボーダールーターのDHCPv6サービスは、下記の構成に使われる
- ネットワークアドレス
- デバイスに必要なマルチキャストアドレス
- ホストネームサービス
管理
ICMP
全てのデバイスは、ICMPv6エラーメッセージ、エコー要求とエコー応答メッセージをサポートする。
デバイス管理
デバイスのアプリケーション層は、デバイス管理と診断を行う情報一式へのアクセスを持つ。これらはローカルで使用されたり、他の管理デバイスへ送られたりする。
Threadが、802.15.4のMAC層から使用する情報
- EUI64アドレス
- 16ビットショートアドレス
- 機能情報
- PAN ID
- パケット送受信完了情報
- パケット送受信時のパケット欠落
- セキュリティエラー
- MAC再送回数
Threadが、ネットワーク層から使用する情報
- IPv6アドレス欠損
- 近接デバイステーブル
- 子機デバイステーブル
- 経路テーブル
永続的データ
実際にフィールドで運用されているデバイスは不慮、もしくはさまざまな目的においてリセットが掛かることがある。リセットされたデバイスは、ユーザーの操作なしにネットワーク機能の稼働を再開する必要がある。これを行うためにいくつかの情報は、不揮発性のストレージに収めておく必要があり、以下のものが含まれる。
- PAN IDなどのネットワーク情報
- セキュリティ要素(それぞれで使用される鍵)
- IPv6アドレスを構成するためのネットワークからのアドレス情報
ここまで、Threadのネットワークトポロジーと形成手順の基礎について紹介してきた。次回は、2つ目のホワイト―ペーパーから「6LoWPAN」について解説する。
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