ルーティングによるメッシュネットワーク:IoT時代の無線規格を知る【Z-Wave編】(3)(2/2 ページ)
ホームネットワーク向け無線規格として、海外を中心に普及が進む「Z-Wave」について解説していく本連載。今回は、ルーティングによるメッシュネットワークについて紹介する。
Z-Waveの3つのデバイス構成
メッシュネットワークを構成するために、Z-Waveは「Always On Device」「FLiRS Device」「Sleeping Device」の3つのデバイス構成を規定している。
Always On Deviceは、常時通電タイプのデバイスで、中継機能を有する。FLiRS Deviceは、バッテリー駆動でも低遅延で動作するように工夫されたデバイスだ。中継機能はない。Sleeping Deviceはバッテリー駆動で、中継機能がない。
コントローラとスレーブ
これまでの連載の中でも既に、コントローラとスレーブ(端末、センサー)という言葉が使われている。コントローラは、スレーブデバイスのネットワークへの追加(Inclusion)、削除(Exclusion)、メッシュネットワークのメンテナンスを行う。
Inclusionは、スレーブに対してHome IDとNode IDを割り当てることを指す。この割り当て機能を有するコントローラを「プライマリーコントローラ」と呼ぶ。Z-Waveでは、1つのネットワークに複数のコントローラの存在を許可している。そのため、プライマリーコントローラ以外のコントローラは、全て「セカンダリーコントローラ」と呼ばれ、プライマリーコントローラの支配下に入る。セカンダリーコントローラは、スレーブデバイスのInclusion、Exclusionができない。
また、コントローラは、バッテリー駆動(リモコンなど)と、通電タイプの2種類を規定している。通電タイプは「スタティックコントローラ」と呼び、「Static Update Controller(SUC)」と「Static ID Server(SIS)」の2つの大きな機能がある。
SUC
SUCはルーティングテーブルを作り、維持管理を行う。ネットワーク上にある全ての端末のNode IDを管理する。常に同じ場所に置かれ、通電するデバイスのみがSUSになることができる。バッテリー駆動、場所が変わる可能性があるものは、SUSになれない。
SIS
SISは、新たな端末をInclusionする機能が備わっている。大規模なネットワーク、広範囲のネットワークでは、新たな端末を追加するたびに、プライマリーコントローラのそばにいき、Inclusionするのは不便だ。SISは、ネットワークの末端でも新たな端末の追加を可能にする。SISは、別名「Inclusion Controller」とも呼ばれている。
次回は、Z-Waveにおいて、アプリケーションレベルでの互換性維持の要となっているコマンドクラスのアーキテクチャについて解説していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Z-Waveの相互互換性を紐解く
前回は、海外を中心に普及が進む無線規格「Z-Wave」の国内動向を中心に紹介した。今回からは数回に分けて、Z-Waveがなぜ相互互換性を実現できているのかについて、ひもといていく。 - 欧米で普及が進む無線規格「Z-Wave」の国内動向
私たちの生活を劇的に変化しようとしているIoT(モノのインターネット)。その実現には多くの要素技術が求められるが、その中でも重要になるのは“ネットワーク技術”である。本稿では、海外を中心に普及が進むIoT向け無線規格「Z-Wave」について、国内の動向を中心に紹介する。 - 「Thread」における6LowPANの活用(前編)
ホームネットワーク向け無線規格として注目を集める「Thread」を解説する本連載。今回は、IPv6と802.15.4技術の統合を実現するレイヤーである“6LoWPAN”について解説していく。 - 「Thread」のネットワークトポロジーと形成手順
ホームネットワーク向け無線規格として注目を集める「Thread」を解説する本連載。今回は、Threadのネットワークトポロジーとネットワーク形成手順の基礎について解説していく。 - 低消費無線規格「Thread」IPスタックの基礎
IoT時代のさまざまな無線規格を紹介する本連載。前回は、ホームネットワーク向け無線規格として注目を集める「Thread」の入門編をお届けした。2回目となる今回は、Thread Groupが公開しているホワイトペーパーから概要を振り返るとともに、ThreadにおけるIPスタックの基礎を解説する。 - Google傘下が主導した無線規格「Thread」とは
家庭やオフィスに無線メッシュネットワークを形成し、丸ごとインターネットに接続できる低消費無線通信の新規格「Thread」。Threadは、Wi-FiやBluetoothなどの既存の無線規格で実現することが難しいIoTの世界を実現する。今回は入門編として、Threadの基礎を紹介する。