「Thread」における6LowPANの活用(後編):IoT時代の無線規格を知る【Thread編】(5)(3/3 ページ)
ホームネットワーク向け無線規格として注目を集める「Thread」を解説する本連載。今回は、Threadにおける6LoWPANアダプテーション層が持つ機能について解説していく。
IEEE82.15.4フレームに収まらない場合
IPv6パケットが単一のIEEE82.15.4フレームに収まらない場合、6LowPAN層は断片化を行い、オリジナルのIPv6パケットはカプセル化され、1つずつ無線転送される。それぞれの6LoWPANパケットは、受信側で再構築されIP層へ届く。その様子を図8に示す。
重要なこととして、宛先デバイスでIPv6パケットの再構築するために全ての断片が必ず届かなくてはならない。メモリオーバーフローの発生による断片の欠損が発生するリスクを避けるため、受信デバイスは、タイマーを使用して、IPv6パケットの最初の6LoWPAN断片が届いた時からスタートし、タイマー期限を超えた場合には、その特定のパケットの受信断片向けに確保していたメモリを開放すべきである。
より詳細な断片化の様子
6LoWPAN層を使用した断片には、2つのタイプが存在する。FRAG1とFRAGNである。FRAG1はIPv6の圧縮ヘッダーを含み、ペイロードの一部を含むことができる。FRAGNパケットは、それに続けて送られる断片で、残りのIPv6ペイロードを必ず含む。FRAG1タイプとFRAGNタイプのヘッダーのフォーマットは図9のようになる。
断片ヘッダーに含まれるフィールドは、宛先のデバイスにおいてオリジナルのIPv6パケットを再構築するのに必要な情報だけを含む。表4にフィールドの定義を示す。
フィールド | 定義 |
---|---|
Datagram size | オリジナルのIPv6パケットのサイズ。 |
Datagram tag | IPv6断片パケットのユニークなID。通常発信元アドレスを使った番号が使用され、パケットがネットワーク全体でもユニークであるようする。全ての断片をひも付ける。 |
Datagram offset | このフィールドは、続きの断片を送る時だけ存在し、オリジナルのパケットからの相対的なオフセットが8バイトの倍数で示される。この方法で自宛先デバイスは、オリジナルのIPv6パケットを再構築する際のコピーする場所を把握する。 |
断片化で重要な特徴としては、全ての断片が元の順番のまま到着する必要がないことだ。6LoWPANでは、断片がどの順番に届いたとしても、オリジナルのパケットを信頼して再構築できる。ただし、唯一の必要条件として、全ての断片が到達する必要がある。
6LowPAN メッシュ中継
Threadは6LoWPANで定義されているメッシュヘッダーのメカニズムを使い、Threadネットワーク内のデバイス間の中継を行う。図11に示す6LoWPANメッシュヘッダーは、それぞれのマルチホップパケットに使われる。
Threadの6LoWPAN層は、メッシュヘッダーを送信元16ビットアドレス、宛先16ビットアドレスで埋められ、ルーティングテーブルから、ネクストホップの16ビットショートアドレスを見つけ出して、ネクストホップの16ビットアドレスを送信先として6LoWPANフレームが送られる。
ネクストホップのデバイスは、次のネクストホップを隣接テーブルとルーティングテーブルから見つけ出し、6LoWPANメッシュヘッダーのホップカウントを1つ減らして、次のネクストホップか最終宛先の16ビットショートアドレスを送信先として送られる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「Thread」における6LowPANの活用(前編)
ホームネットワーク向け無線規格として注目を集める「Thread」を解説する本連載。今回は、IPv6と802.15.4技術の統合を実現するレイヤーである“6LoWPAN”について解説していく。 - 「Thread」のネットワークトポロジーと形成手順
ホームネットワーク向け無線規格として注目を集める「Thread」を解説する本連載。今回は、Threadのネットワークトポロジーとネットワーク形成手順の基礎について解説していく。 - 低消費無線規格「Thread」IPスタックの基礎
IoT時代のさまざまな無線規格を紹介する本連載。前回は、ホームネットワーク向け無線規格として注目を集める「Thread」の入門編をお届けした。2回目となる今回は、Thread Groupが公開しているホワイトペーパーから概要を振り返るとともに、ThreadにおけるIPスタックの基礎を解説する。 - Google傘下が主導した無線規格「Thread」とは
家庭やオフィスに無線メッシュネットワークを形成し、丸ごとインターネットに接続できる低消費無線通信の新規格「Thread」。Threadは、Wi-FiやBluetoothなどの既存の無線規格で実現することが難しいIoTの世界を実現する。今回は入門編として、Threadの基礎を紹介する。 - Z-Waveの相互互換性を紐解く
前回は、海外を中心に普及が進む無線規格「Z-Wave」の国内動向を中心に紹介した。今回からは数回に分けて、Z-Waveがなぜ相互互換性を実現できているのかについて、ひもといていく。 - 欧米で普及が進む無線規格「Z-Wave」の国内動向
私たちの生活を劇的に変化しようとしているIoT(モノのインターネット)。その実現には多くの要素技術が求められるが、その中でも重要になるのは“ネットワーク技術”である。本稿では、海外を中心に普及が進むIoT向け無線規格「Z-Wave」について、国内の動向を中心に紹介する。