ワイパーの位置を検出する:Design Ideas 信号源とパルス処理
今回は、プリセット可能なアップ/ダウンカウンターを2つ用いて、デジタルプログラマブルポテンショメーター(DPP)のワイパーの位置をデジタル記録し、保持する回路を紹介する。
最大256タップのDPPに対応
増加/減少を制御するシリアルインタフェースにデジタルプログラマブルポテンショメーター(DPP)を採用すると、さまざまな利点が得られる。例えば、インタフェースのプログラミングが簡単になり、短時間で済ませられるようになる。さらにリアルタイムアプリケーションへの適用が可能である。
しかし弱点もある。現在の制御量、すなわち摺動子(ワイパー)の位置に関する情報が得られないことだ。アプリケーションによっては、この情報が欠かせない。例えば、閉ループのリアルタイムアプリケーションのパラメーター制御にポテンショメーターを使う場合である。最終的なワイパーの位置を反映する情報があれば、製品性能や回路設計の評価に生かせる。
図1は、プリセット可能なアップ/ダウンカウンター「CD4029」を2つ用いて(IC2とIC3)、DPP(IC1)の制御量(ワイパーの位置)をデジタル記録し、保持する回路である。カウンターはIC1の制御信号であるINC信号とU/D信号をモニターする。
電源投入時には、ワイパーは位置(00)10にあるものとする。この位置は、内部の不揮発性メモリに前もってプログラムすることで設定しておく。さらに電源投入時には、R1とC1で5V電源の立ち上がりの微分値を求め、この微分信号を使って2進カウンターを(0000 0000)2にプリセットする。
この結果、電源投入後のDPPと外部カウンター(IC2とIC3)は、同じポイントに設定される。アップ/ダウン信号(信号のレベル変化に反応)は、DPPのワイパーが動く方向と、カウンターの変化の方向を決める。INC信号(信号のエッジに反応)は、ワイパーとカウンターを進める。ただしDPPのINCピンは負のエッジに、カウンターのクロック入力は正のエッジに応答する。
カウンターのQ出力(DB0〜DB7)を使って、ワイパーの位置を2進法で表示する。すなわち2つのカウンターを使う今回の回路では、最大256タップのDPPに対応できる。このDPPは、ワイパーが上限値、または下限値を超えた場合のラップアラウンド*)機能は備えていない。しかしカウンターが代わって、ラップアラウンドを実行する。
*)ラップアラウンド:数値がオーバーフローして0に戻ること。このとき、フラグレジスターのキャリービットがオンとなり、レジスターの内容はクリアされる。
カウンターとDPPが同期していない場合を特定するには、カウンターのMSBをフラグとして利用する。32タップのDPP「CAT5114」、もしくは100タップの「CAT5113」を使う場合は、DB7をフラグとして使う。
電源投入時のカウンターの初期値は、ゼロ以外に設定できる。DPPを再プログラミングし、カウンターのJAM入力を所望のレベルに設定することで実現可能だ。
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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事から200本を厳選し、5つのカテゴリーに分けて収録した。
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