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差動信号伝送のメリット ――使用されている技術と注意点高速シリアル伝送技術講座(2)(3/4 ページ)

高速シリアル伝送技術について基礎から学ぶ本連載。2回目は、差動信号伝送の特徴、メリットに焦点を当て、使用されている技術や注意点について解説していきます。

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メリット3)ノイズに強い(コモンモードノイズリジェクション)

 シングルエンドでは信号振幅が小さくなると相対的にノイズに弱くなりますが、差動信号の伝送では外来ノイズはコモンモードとしても重畳され、一定の条件を満たすことでレシーバーにより除去できる仕組みがあります。


図13:差動レシーバーでのコモンモードノイズの除去

 図13で差動信号は+と−の並行した信号線でレイアウトされ、印加されるノイズは差動ライン+/−の双方に同じエネルギーが重畳されることにします。

 下側の大振幅のCMOSシングルエンド信号線に1/2Vcc以上のノイズが乗ると入力バッファはそのノイズでスイッチングしノイズが出力されます。差動レシーバーでは差動の「(+信号)−(−信号)」を計算し出力するため,外部からのこの同相ノイズはキャンセルされ、LVDSを含む差動レシーバーは高いノイズ耐性を持っていると説明されています。

 ただし、レシーバーのこのノイズキャンセル動作は、受信端に重畳されるコモンモードノイズの大きさや+と−信号の入力タイミングに依存しています。

 図14のように3.3V電源のLVDS差動レシーバーにコモンモード範囲の1.2V±1V程度の低周波ノイズを重畳した場合はコモンモードノイズとしてキャンセル可能です。また0V〜3.3V程度の広いコモンモード範囲を持つLVDSレシーバーでは、同様に電源電圧範囲内の低周波コモンモードノイズをキャンセル可能ですが、電源電圧範囲外のコモンモードノイズには対応できません。


図14:LVDS差動入力へのコモンモードノイズ重畳

 LVDSレシーバーに限らず半導体は電源電圧範囲外の絶対最大定格を超える物理的な入力に耐えることはできません(一部の低速通信デバイスは除く)。外来ノイズはコモンモードノイズとして重畳されますが、レシーバーが受信可能な入力コモンモード電圧範囲は、CML、PECLも同様に限定された範囲です。重畳される外来ノイズの大きさと比較すると、高速の差動レシーバーは限定的なコモンモード電圧の範囲しか持ちません。

 また差動の受信レシーバー部で+/−の差動配線間の結合が弱く、印加ノイズの+と−ピンへの入力タイミングがずれる場合も、差動レシーバーはこのノイズをコモンモードノイズとしてキャンセルすることができません。

メリット4)消費電力が低い

 CMOSロジックでは、スイッチング動作を行わない静状態は電流がほぼ流れないため、消費電流は大変低くなります。スイッチング動作を行うと図15-1のようにpMOSとnMOSが双方オンになる瞬間があり、Gnd・Vdd間に貫通電流が流れ、周波数に比例して消費する電流が大きくなります。

 LVDSドライバでは図15-2の等価回路のように3.5mAの低電流源を使用し、論理値1は青色の矢印、0は黄色の矢印の方向に電流を駆動する方式のため、低消費電力となっています。

左=図15-1:CMOSロジック回路 / 右=図15-2:LVDSの低電流駆動のスイッチ動作

 図16は一般的な1ch LVDSドライバのスイッチング周波数と消費電力の関係を表したグラフです。DC〜100MHz近辺まで8mA程で変化は少なく、400MHzで11mA程度となっており、100MHzと比較すると4倍の周波数で、消費電力の上昇は1.5倍程度に抑えられています。LVDSではCMOSロジックのように周波数の上昇で消費電力が比例的に大きくなることはありません。


図16:LVDS 1chドライバ スイッチング周波数と消費電力
出典:http://www.analog.com/media/en/technical-documentation/data-sheets/ADN4661.pdf

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