検索
連載

データシートの勝手な解釈は禁物! いま一度、数字の意味を考えようマイコン講座 データシートの読み方編(3)(4/4 ページ)

データシートの読み方編の最終回となる今回は、マイコン製品のデータシートのうち、「フラッシュメモリ特性」「ラッチアップ、EMS、EMI、ESD」「汎用I/O」「リセット回路特性」「通信機能特性(SPI)」「A-Dコンバーター特性」の項目について解説していく。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

A-Dコンバーター特性

 データシートに記載されているA-Dコンバーターのスペックには2種類ある。1つはA-Dコンバーターモジュールの電気的特性(図9)、もう1つはA-Dコンバーターで変換した結果の誤差に関する特性(図10)だ。

 図9にサンプル&ホールドタイプのA-Dコンバーターの電気的特性を示す。

 最初に、電源電圧や動作周波数が規定されている。A-Dコンバーターはアナログ回路なので、MOSのアナログ特性の影響を受ける。例えば、動作周波数fADC(ADC clock frequency)は、電源電圧によって2段階で規定されている。これは電源電圧が低くなると、MOSのスイッチング速度が遅くなるためである。

 また、このA-Dコンバーターはサンプル&ホールドタイプなので、サンプリングする回路の抵抗値(RADC)やホールドするためのコンデンサー(CADC)の容量値も記載されている。サンプル&ホールドタイプのサンプリング時間の計算方法は「Q&Aで学ぶマイコン講座(12):サンプル&ホールド型A-Dコンバータのサンプリング時間はどうやって決めるの?」を参照してほしい。

 アナログ回路のもう1つのポイントは、A-D変換中の消費電流である。アナログ回路は、基本的にバイアス電流を流すため、他のデジタル回路の周辺機能に比べて、消費電流が大きくなる傾向がある。そのため、ユーザーはアナログ用電源の供給可能容量を設計する際に、A-Dコンバーターの消費電流を考慮しなければならない。過去にA-Dコンバーター用電源の設計(デカップリングコンデンサーなどの周辺回路など)が不適切で、電流変動の影響で変換誤差が大きくなった例がある。

 図10に誤差に関するスペックを示す。


図10:A-Dコンバーター変換精度特性 (クリックで拡大)

 一応、適応図付きで各誤差の意味を説明しているが、それでも理解していないユーザーが多い。初めてA-Dコンバーターを使うユーザーは、A-Dコンバーターの専門書で勉強しておくことをおすすめする。

 誤差に関しての過去の問題事例としては、ここに記載してある誤差を全て足せば、実際の変換誤差になると考えていたユーザーがいた。一応、各誤差を説明し、納得してもらったが、まずはA-Dコンバーターの基本的な知識を身に付けてもらいたい。

筆者プロフィール

菅井 賢(すがい まさる)
(STマイクロエレクトロニクス マイクロコントローラ製品部 アプリケーション・マネージャー)

 日系半導体メーカーにて、25年以上にわたりマイコンの設計業務に携わる。その後、STマイクロエレクトロニクスに入社し、現在までARM Cortex-Mプロセッサを搭載したSTM32ファミリの技術サポート業務に従事。ARMマイコン以外にも精通しており、一般的な4ビットマイコンから32ビットマイコンまで幅広い知識を有する。業務の傍らマイコンに関する技術論文や記事の執筆を行っており、複雑な技術を誰にでも分かりやすい文章で解説することがモットー。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る