オペアンプのダイナミック応答の検討(1) タイプ2補償回路の使用時:アナログ回路設計(6/6 ページ)
補償回路は、理想的な特性を想定したオペアンプを中心に構築したアクティブ回路が使用されます。ですが、理想的なオペアンプを想定した計算は成立せず、最終的にゲインと位相の深刻な歪みを招く結果になります。開ループゲインと、低周波および高周波にある2つの極が全体的な応答の形状をどのように規定するかが明らかになると、適切なオペアンプを選択できます。
回路間での応答の比較
開ループゲインを説明するタイプ2の補償回路によるダイナミック応答を、以下の参考資料[1]に示すタイプ2の補償回路の理想的な伝達関数と比較するのは興味深いことです。
ここで、
比較の目的で、50dBの開ループゲインを持つオペアンプ(例えば、TL431)と次のターゲットを想定します。fc=10kHzで、この周波数での補償ゲインは20dBで、位相ブーストは65度でなければなりません。12V出力および、2.5Vの基準電圧に対応するR1とRlowerを計算します。式31と式36の2つのダイナミック応答を図14に示します。クロスオーバーゲインと位相ブーストの偏差は無視できる大きさです。ただし、120Hzの周波数で式31のゲインが35dBであるのに対し、式36のゲインは45dBです。
最後に、有限なAOLオプションに対する擬似静止ゲインはわずか36.4dB(約66)であるのに対し、理想的なオペアンプでは無限大です。これらの数値の違いはどのような影響を及ぼしますか。ライン電圧の周波数で2回目のゲイン不足が生じると、制御システムの整流リップル除去能力に影響を及ぼします。出力変数はこの要因によって劣化しており、電圧モード制御では特にそれが顕著です。また、プラントゲインも同様に低い場合は、被制御変数に大きな静的誤差が生じる可能性があります。例えば80dBなど、より大きいAOLを持つオペアンプを選択した場合、違いがなくなり図15に示すように両方の曲線は互いに接近します。
まとめ
この第1部では、理想的でないオペアンプを採用した補償回路における開ループゲインの影響を示しました。オペアンプが理想的でないと考えられる場合でも、弱い開ループゲインがダイナミック応答の低周波数領域に及ぼす影響を確認し、この条件に起因する性能低下を評価することができます。この第1部では開ループゲインの影響のみを考慮しました。第2部では、低周波および高周波の2つの極を追加してより複雑な分析を実施します。これは安定性を保証するために、設計者がオペアンプで自然に実施している設定です。
参考資料
[1]C. Basso, “ Designing Control Loops for Linear and Switching Converters – A Tutorial Guide”, Artech House 2012, ISBN 978-1-60807-557-7
[2]C. Basso, “Linear Circuit Transfer Functions – An Introduction to Fast Analytical Techniques”, Wiley 2016, ISBN 978-1-119-23637-5
[3]V. Vorpérian, “Fast Analytical Techniques for Electrical and Electronic Circuits”, Cambridge University Press 2002, ISBN 978-0-521-624428
[4]C. Basso, “Fast Analytical Techniques at Work with Small-Signal Modeling”, APEC Professional Seminar, Long Beach (CA), 2016, http://cbasso.pagesperso-orange.fr/Spice.htm
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