マイコンの汎用出力を使ってLCDを直接駆動する:Design Ideas ディスプレイとドライバー
液晶ディスプレイ本体の駆動には、専用のインタフェース回路や周辺回路を必要とする。そこで、本稿ではマイコンの汎用出力を使用してLCDを簡単に駆動する方法を紹介する。
LCDの大きさにかかわらず、汎用マイコンで駆動できる
液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)本体の駆動には、専用のインタフェース回路や周辺回路を必要とする。本稿ではマイコンの汎用出力を使用してLCDを簡単に駆動する方法を紹介する。
多くの組み込み機器では、ユーザーに情報を知らせる方法として数字や英数字をディスプレイ表示する。7セグメントおよび14セグメントのLEDディスプレイは、低価格で入手が簡単で、サイズは豊富にある。ただし、比較的高い電力を必要とする。また直射日光の下では読みやすさに限界がある。つまり電池によって電源を供給する携帯機器への使用は制限される。
また、HD44780互換の液晶コントローラーLSIで駆動するLCDモジュールを用いれば、簡単なインタフェースと、低い消費電力、良好な読みやすさを実現できる。しかし、コストが比較的高くつく。また外形寸法が大きくなり、小型機器への収容を難しくしている。
LCD本体のみを使用すればこれらの問題を解決できる。ただし、LCD本体が要求する駆動方法は単純ではない。図1には、4枚の裏面基板に作り込んだ電極(バックプレーン電極)でLCDを駆動するときに使用する信号波形を示す。この駆動方法では、全てのLCDの信号に対して4つの別々の電圧レベルを使用する。専用の周辺回路や外部コントローラーがない場合には、このような信号の生成は難しい。実現には多くの素子を必要とする。
幸いにも、チップ上に専用の周辺回路を搭載していない汎用マイコンで別の駆動方法を実現できる。図2にその信号波形を示す。この駆動方法だと、電圧レベルの数が少なくて済む。LCDのバックプレーン電極上では3つの電圧レベル、前面のガラス基板に作りこんだ電極(フロントプレーン電極)上では2つの電圧レベルを使用するだけである。このように電圧レベルの数が少ない波形は、マイコンの汎用出力を使用して簡単に合成できる。
図3には、マイコンによる駆動方法を利用した代表的な回路例を示した。BPx(バックプレーン電極)にはマイコンの3ステートの汎用出力を接続する。FPx(フロントプレーン電極)には一般の汎用出力を接続する。マイコンの端子を3ステートレベルにすることによって、BPx上にVDD/2の電圧が得られる(通常は端子を入力に設定した場合に得られる)。
最新式のマイコンは広範囲な電源電圧で動作する。この電源電圧を変化させるのは、コントラストを調整する効果的な方法である。図4は、米Freescale Semiconductor社のマイコンで駆動したLCDの例である。図4(a)には2×11セグメント構成、図4(b)には4×16セグメントの構成の例を示した。図5には、小さいほうのLCDである図4(a)の駆動波形を示した。わずかに2枚のバックプレーン電極を使用しているだけで実現できている。
図4:LCDの表示例
米Freescale Semiconductor社のマイコン「MC68HC908GP32」を使用した。
(a)は2×11セグメントLCDの表示例。
(b)は4×16セグメントLCDの表示例。
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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事から200本を厳選し、5つのカテゴリーに分けて収録した。
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