DC-DCコンバーターの絶縁と出力リップル:DC-DCコンバーター活用講座(18) データシートの理解(4)(4/4 ページ)
今回の記事では、前回に引き続きデータシートを読み取る上で必要なDC-DCコンバーターの諸特性について解説します。
出力リップル/ノイズ
全てのDC-DCコンバーターは、出力リップル/ノイズ成分を含んでいます。リップル成分は出力フィルターコンデンサー中の充電電流および放電電流に起因し、その周波数は一般的に、トポロジーに応じて動作周波数またはその2倍です。
メインスイッチの状態が変化するたびに、全ての寄生効果によって生じるスイッチングスパイク(ノイズ)が基本的なリップル波の上に重なります。これは、リップル波の全ての山と谷で生じます。スイッチング過渡現象の発生頻度は一般的にリップル周波数より何桁か高く、大体MHzで表されるような値になります。組み合わされた波形は、出力リップル/ノイズ(R/N)値を示し、普通、ミリボルトピークトゥピーク(mVp-p)で表されます。
このほかにも、出力電圧レギュレーション回路か発生する非常に遅い振幅が、出力リップル/ノイズ波形の上に重なります。負荷と入力電圧が一定の場合の出力電圧は、Hzを単位とする一桁の周波数の許容帯域内で上下します。「ハンチング」と呼ばれるこの効果は、レギュレーターのヒステリシスによって生じ、データシートにあるR/N値では考慮されていません。というのは、ハンチングは出力電圧精度の仕様の一部であり、R/N仕様には含まれないからです。
出力リップルを減らすために出力コンデンサーを追加したくなりますが、この方法ではp-p値はわずかに減らせても、リップル波形を完全に除去することはほとんどできません。実際、サイクル単位の制御を行うコンバーターにとって、正しいレギュレーションを行うためには、ある程度の出力リップルは必要不可欠なものです。
実用的ヒント
R/Nを減らすためのより効果的な方法は、リニアレギュレーターを用いてポストレギュレーションを行うことです。リニアレギュレーターによる電源リップル除去比(PSRR)はとても高く(最大で70dB)、非常に有効なリップルフィルターになります。
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※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。
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