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世界が注目するEVモーターの高効率化原理について考えてみようめざせ高効率! モーター駆動入門講座(5)(2/3 ページ)

5回目となる今回は、モーターの高効率駆動を二酸化炭素削減の目玉である電気自動車(Electric Vehicle/以下、EV)から考えてみたいと思う。

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リラクタンストルクの役割

 インバーター駆動による家庭用エアコンのモーター駆動出力が3kW程度に対して、EVの車輪を駆動する主機モーターの駆動出力は150kWにも及ぶ高出力である。また一般的なモーターでは、定格と呼ばれる1点の特性を満たす設計(本講座第3回の図1、DCモーターの性能線図参照)が行われるが、EVは停止から発進、強いトルクでの加速、一般道の中速から、高速道路での最高速と広い範囲での高効率駆動が求められる。また充電1回当たりの航続距離も重要な特性になる。これらを満たすには、相反する小型、軽量と高出力の特性を両立させる必要があり、従来の表面磁石形同期モーターから埋込磁石型同期モーターへと進化してきた。

 埋込磁石型同期モーターにおいても、これまで説明してきたように、導線をループ状に巻き、そこに電流を流しN極S極を発生させ、できた回転磁界の中に磁石をいれるとそれらが引き合うマグネットトルク(本講座第1回参照)が発生する。そしてEVに使用されるこのモーターでは、さらに強磁性の鉄心と磁力線によるリラクタンストルク(図2参照)が加わり、高効率駆動の要となっている。さらに、この構造は高回転時の遠心力による磁石の飛散を防ぐことにも役立っている。


図2:EVに最適な埋込磁石型同期モーター

 では、リラクタンストルクはどのようにして発生するのだろうか。

 磁力線は、通りやすい鉄心の部分を通ろうとする。磁力線が通りやすい材料を透磁率が高い材料という。

 図3aの磁界の中に回転軸をもった長方形の鉄心を置くと、磁力線が最短で通ることのできる位置で止まり安定する。図3bのように今度は、わざとこの鉄心を45度の角度にすると、磁力線は最短ではなくなるので、最短になろうとして、回転トルクが発生する。あたかも磁力線というゴムが伸ばされて、縮んで、元の位置に戻ろうとするようである。この力こそがリラクタンストルクであり、モーターに利用されている。


図3:磁力線の性質によりリラクタンストルク発生

 続けて、磁石によるマグネットトルクと磁力線によるリラクタンストルクの関係を見てみよう(図4参照)


図4:マグネットトルクとリラクタンストルクの関係

 図4に示すようにロータ位置が0度の時に、マグネットトルクは最大になり、リラクタンストルクはロータ位置が45度となった時に最大となる。また、マグネットトルクが進み位相90度でトルクゼロになるのに対して、リラクタンストルクは0度と90度の2つの位置でトルクゼロになる。

 それぞれの発生するトルクをグラフ化し、合成トルクを描いてみると図4下グラフのようになり、トルク最大値が0〜45度の間にあることが分かる。コイル電流を誘起電圧に対して進み位相にすることで、マグネットトルクは弱くなるがリラクタンストルクが強くなる。よって、コイル電流の位相を制御すれば合成トルクを最大にすることができる。

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