世界が注目するEVモーターの高効率化原理について考えてみよう:めざせ高効率! モーター駆動入門講座(5)(3/3 ページ)
5回目となる今回は、モーターの高効率駆動を二酸化炭素削減の目玉である電気自動車(Electric Vehicle/以下、EV)から考えてみたいと思う。
リラクタンストルクを有効活用するための弱め磁束制御
ここまで、表面磁石形同期モーターにおける高効率駆動の基本は、「各コイルに発生する誘起電圧と電流位相を合わせる」と述べてきた(図5のId=0)
埋込磁石型同期モーターのリラクタンストルクを有効的に使うにはどうすればよいかというと、リラクタンストルクが最大になる位置で電流を流せばよいのである。つまり、マグネットトルクが最大となる電流位相から45度進んだ位置である。このように電流位相を誘起電圧位相より進めて駆動することを弱め磁束制御という(図5のId<0)
磁石磁束を打ち消す方向に進め位相の電流を流すことによって、モーター電流による磁束を発生させ、誘起電圧を抑えることでより多くのコイル電流を流すことができ、高回転動作が可能となる。さらにその電流でリラクタンストルクを増やせるため、この2つの動作によりモータトルクと回転数範囲を拡大することができる。
昇圧によるモーター印加電圧制御
さて、ここでxEVモーターを駆動する主機インバーターの構成を見てみよう(図6)
モーターの駆動電圧を大きくすることでモーターの速度とトルクを上げられる。
昇圧回路はコイル、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、コンデンサーからなり、走行状況に応じてバッテリー電圧をさらに昇圧する場合がある。この昇圧により、モーターの損失原因となる電流を増やさずに高出力化、高効率化を実現する。基本であるモーターのトルクと速度の関係を駆動電圧のパラメーターグラフで確認してみよう(図7左図参照)
さらに、走行状況や負荷に合わせて、このモーター電圧と弱め磁束制御によりトルクをアップし、最高回転数を上げて高効率駆動を可能としている(図7右図参照)。電池とモーターの間で電気を制御しているのがインバーターであり、最近では、モーター、インバーター、減速機(変速機ではない)を機電一体とし、長いワイヤーハーネスを不要にすることで、効率化、小型化を実現できるようになっている。
おわりに
先に、電池が重要パーツと述べたが、xEVの爆発的な普及にはこの電池のコスト(EVの50%近くを占めるといわれている)、連続走行距離、電池寿命(劣化)だけでなく、供給面についても問題になってくる。現在、スマートフォンを中心に使用されている電池が、2025年には、車載用と合わせて現在の5倍に需要が増えるとの試算もあり、どのタイミングでEVの比率を増やすかも重要な判断になるだろう。しかし、EV購入者には、オイル交換がいらない、ブレーキパッドなどの消耗品交換も減る、燃費(電費)が安くなるなどのメリットも多い。また自動車の未来へ向け、CO2削減、情報化、知能化に対して、EVの発展に期待するところである。その一躍に私も少しでも貢献したいと思う。
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