DC-DCコンバーターの熱パラメーター理解:DC-DCコンバーター活用講座(19) データシートの理解(5)(4/4 ページ)
今回は、DC-DCコンバーターの選定で重要な指標となる熱性能パラメーターついて解説します。
強制冷却
強制対流冷却(ファン冷却)は、自然対流に熱移流を加えることで周囲温度に対する熱インピーダンスθCAを減少させます。移流は、1秒間にコンバーターを通過する空気の流量や気流の乱れに依存します。自然対流に1.00の正規化熱インピーダンスが与えられた場合、層流(リニアフィート/秒、LFM)が増加するとともに熱インピーダンスは下表のように減っていきます。
10LFM(自然対流) | 1.00 |
---|---|
100LFM | 0.67 |
200LFM | 0.45 |
300LFM | 0.33 |
400LFM | 0.25 |
500LFM | 0.20 |
図3のディレーティングのグラフのもとになったコンバーターの例に戻ってみると、温度上昇の式ΔTRISE=PDISSθCAはここでも使えます。また、内部電力損失もやはり同じで2Wです。自然対流では、θCAは18.2℃/Wで、温度上昇は37℃、全負荷時の最大動作温度は68℃でした。100LFMの強制対流では、θCAは0.67倍または12.2℃/Wで、温度上昇は24.4℃に減り、全負荷時の最大動作温度は81℃になります。
強制対流と小型ヒートシンクを組み合わせた場合、強制対流だけの場合よりわずかに効果が上がりますが、収穫逓減の法則に陥ります。クリップ式ヒートシンクを取り付けると、自然対流での全負荷時の最大動作温度は68℃から5℃上がって73℃になりました。逆算すると、ヒートシンクなしで18.2℃/Wだったものが、ヒートシンクありだと約16℃/Wに低下したことになります。100LFMなら、熱インピーダンスはさらに10.5W/℃まで下がります。全負荷時の最大動作温度は84℃まで上がりますが、これは、ヒートシンクなし、100LFMの場合と比べてわずかに3℃高いだけです。図6に、ヒートシンクを付けたコンバーターの複数の気流における計算結果を示します。
伝導冷却と放射冷却
対流と移流のほかにも、熱輸送メカニズムがあります。コンバーターの熱は、伝導と放射によっても取り除くことができます。
熱伝導は、直接接触によるある物体から別の物体への温度勾配による熱の移動です。輸送メカニズムはフォノン、つまり原子レべルの振動による、ある分子から別の分子へのエネルギーの移動です。移動率または熱流束は、材質の熱伝導率(Wm-1℃-1)と温度差に依存します。
ベースプレートに搭載されているコンバーターは、熱伝導を第一の冷却手段として頼みにしていますが、どんなコンバーターも、接続ピンからPCB配線への熱移動の恩恵を得ることができます。図7に、ベースプレート冷却型コンバーターの熱インピーダンスのつながりを示します。
主な熱流束移動は直接的な接触によるため、ベースプレートとヒートシンク間の接触面積をできるかぎり大きくすることが非常に重要です。ほんの小さな接触不良があっても空気の隙間が残ってしまい、対流による熱移動が行われなくなります。もし、ベースプレートとヒートシンクの両方の平たんさが5mils(0.125mm)以内でない場合、熱伝導は急激に悪化します。そのため、良好な物理的、熱的接触を得るために放熱グリスやギャップパッド等の熱伝導性媒体(TIM)が広く使われています。
放射熱移動は、赤外線放射による物体からの熱移動です。私達が感じている太陽の熱は、真空空間が全ての対流、伝導による熱移動を遮断してしまうため、純粋な放射熱です。コンバーターは、真空中でも放射熱損失によってエネルギーを消費することがありますが、コンバーターのケース温度がおよそ300〜400Kと低い場合、この熱損失は対流、伝導による熱移動と比べて微々たるものです。しかし、高度が高い場合、伝導と放射のどちらの冷却も重要性を増します。というのは、対流による熱移動には、空気流量に依存するために空気圧が下がるにつれて移動量も減少するという欠点があるからです。
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※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。
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