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DC-DCコンバーターの出力過電圧保護と入力過電圧保護DC-DCコンバーター活用講座(21) DC-DCコンバーターの保護(2)(4/5 ページ)

今回は、DC-DCコンバーターの出力過電圧保護と入力過電圧保護について解説します。

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複数の素子を使用するOVP

 多くの場合、個々の部品の抑制特性は、過電圧保護要求の全てに対応しているわけではありません。従って、さまざまな素子を同時に使用することで、全体として必要な特性を実現しなければならないことがあります。

 前のセクションに示したように、バリスタまたはサプレッサダイオードは、多くのDC-DCアプリケーションのOVPに適していますが、場合によってはDC-DCコンバーターの入力を適切に保護するために、両方を組み合わせて使用しなければならないこともあります。MOVは高い電流容量を備えていますが、クランピング電圧も高くなっています。一方、TVSダイオードはスイッチングが非常に高速で(ナノ秒単位)VBRを低くすることができますが、電力定格も制限されています。

 一般的には、応答時間が短い保護素子ほど扱える電力量は少なくなります。これは、完全なOVPのためには、その素子が最大電流を扱うことができるような形で、シーケンス内に保護機構を組み込まなければならないことを意味し、なおかつ、ラインの最初になければならないことを意味しています。図7に標準的な構成を示します。


図7:複数の保護素子で構成したOVP 出典:RECOM(クリックで拡大)

 図7は、複数段からなるOVP回路を示したものです。直列ヒューズは、MOVが過熱して故障した場合に短絡保護機能を提供します。それ以外の場合は、入力に並列に置いたMOVが、入力過電圧サージによるエネルギーのほとんどを吸収します。入力電圧は、MOVの応答に要する時間内にTVS素子によってクランプされます。この場合、電流制限は直列インピーダンスZSによって実現されます。最後に、入力コンデンサーが残りのパルスエネルギーの吸収を助けます。


図8:図7に示すOVP回路の波形 出典:RECOM(クリックで拡大)

 入力スパイクのエネルギーが特に大きい場合は、電流を分担させるためにTVS素子を並列に接続できますが、MOVを並列化すると致命的な故障の可能性が倍になるので、これは推奨できません。ジュール定格が高い部品を1つ選ぶ方が得策です。

 ZSは抵抗とすることができ、これはコストの観点から望ましい方法ですが、入力と直列なので、通常動作電流に対して定格を定めなければならないこと、それによって全体的効率が損なわれることも考慮する必要があります。より望ましい選択肢は、直列抵抗が100mΩ範囲にあるチョークですが、この場合はコストがかさみます。

OVP標準

 OVP素子のデータシート性能は理論的なもので、その性質上、理論的なものとならざるを得ません。これは特に、実際の保護回路が功を奏するかどうかが、DC-DCコンバーターの部品の頑強さと、回路全体の構造に依存しているからです。わずかなPCB寄生インダクタンスやインピーダンスであっても、結果に大きな影響を与えることがあります。従って、回路内でのOVPの挙動と性能を確認するには、実際に即したテストが必要です。

 テスト時に過電圧過渡やサージが偶然発生するのを待つのは現実的ではないので、国内的および国際的なテスト標準がいくつも定められています。例えば、国際標準IEC 61000-4-5は、ソースインピーダンス2Ω(入力から入力)または12Ω(入力からグラウンド)の高電圧パルス発生器から供給され、50μsでピーク値の50%まで低下する立ち上がり時間1.2マイクロ秒の電圧過渡を「サージ」と定義しています。この1.2/50マイクロ秒パルスのピーク電圧は、製品の設置等級に応じて0.5k〜4kVの範囲で選ぶことができます。自前でサージテスターを作成することも可能ですが(標準に方法が記載されています)、できれば、既知の性能を備えた校正済みテスト機器を購入することを推奨します。


表1:IEC 61000-4-5テストレベル 出典:RECOM(クリックで拡大)

 標準には、このような過電圧現象の後に発生が予想される影響についても定めています。


表8:IEC 61000-4-5性能レベル 出典:RECOM

 電気的高速過渡/バースト耐性(例えばIEC 61000-4-4:5/50ナノ秒波形、5kHzで15ミリ秒繰返し、または100kHzで0.75ミリ秒繰返し)および静電放電(ESD)電圧レベルを定めた同様の標準もあります。

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