DC-DCコンバーターの出力過電圧保護と入力過電圧保護:DC-DCコンバーター活用講座(21) DC-DCコンバーターの保護(2)(5/5 ページ)
今回は、DC-DCコンバーターの出力過電圧保護と入力過電圧保護について解説します。
切断によるOVP
どのテスト方法を選ぶかはエンドユーザーのアプリケーションによって大きく異なり、アプリケーション固有のOVPテスト標準も別に存在します。例えばEN50155鉄道用標準は、公称入力電圧の140%の電圧に1秒間耐えることのできるサージ耐性を求めています。
このような長い時間に及ぶサージ電圧を、電力を大量に消費/放出することなくクランプすることは容易ではありません。ソリューションの1つは、DC-DCコンバーターを保護するために、過電圧の時間だけ入力を切断することです。このタスク用に使用できるカスタムコントローラーICがあり、このICには、1マイクロ秒未満の時間で電源を切断できる過電圧検出回路とFETゲートドライバが組み込まれています(図9)。
切断によるOVPは長時間の過電圧保護に有効なだけでなく、入力電圧が非常に低い場合の信頼できる保護回路の1つです。DC-DCコンバーターの入力電圧が例えば1.2Vの場合は、従来のOVP素子を使って保護することは容易ではありません。これは温度係数が大きなエラー要因となるためで、ダイオードが公称電圧で導通を開始してしまうか、クランピング電圧が高くなり過ぎてしまい、使用できなくなります。
言うまでもなく、切断OVPの欠点は、過電圧状態の間DC-DCコンバーターに電源が供給されなくなることです。切断時間が短い場合、DC-DCコンバーターへの入力電圧は、入力に大容量のコンデンサーを追加することによって維持できますが、切断時間が長い場合は、バッテリーバックアップやスーパーキャパシターシステムが必要になることがあります。
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※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。
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