リレー(4) ―― 信頼性と使用上の注意点 〜その1〜:中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(29)(3/3 ページ)
今回はディレーティングやリレーを使う上で設計者が考慮しなければならない注意点について説明します。
接点の最終設置方向
接触不良の項でも述べましたがカーボンなどの生成された異物や組み立て工程中で混入した異物が接点間に挟み込まれ接触不良を起こすことがあります。この故障確率を少しでも下げるために設計者としては図2に示すようにリレーの最終設置方向と重力方向を考慮する必要があります。
図2(a)の例ではかみ込んだ異物はリレーが動作しても落下しませんが図2(b)の例であればリレーの動作の度に重力によって落下しますので信頼性を向上させることができます。ただし、この場合の方向とは電子機器などの最終設置方向を指します。
また動作中に衝撃、振動がリレーに加わる場合も図2(b)の方向にリレーを配置してください。
接点の消弧回路
スイッチ(SW)の章でも述べたように接点の保護にCRスナバーなどの消弧回路を付加して接点を保護することが広く行われており、特に誘導負荷の場合には接点保護の観点から必須とされています。特にDC回路ではアークが自己消弧しないために接点の損傷がひどくなりますから消弧回路は必須と言えます。
ただし、既に説明したようにL負荷の蓄積磁気エネルギーは誘起電圧の形で消費(放出)されるので誘起電圧が小さいほど放出時間が長くなります。ここではL負荷の代表としてインダクタンスを想定しますが表4に示すように消弧回路ごとに得失がありますので負荷の特性と併せて方式を選択してください。
また発生損失は開閉頻度に比例しますので最悪条件で各部品の定格電力などを選ばなければなりません。
今回はリレーのディレーティングや不良現象から見たリレーの選択および、使用上の注意点について説明しました。
次回はまだ説明していない、設計者が配慮しなければならない注意点や実際に量産工程で使用する場合の保管などについて説明します。
執筆者プロフィール
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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