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DC-DCコンバーターの安全性(1) 感電保護DC-DCコンバーター活用講座(26)(5/5 ページ)

今回からDC-DCコンバーターの安全性に関して説明します。まずは、DC-DCコンバーターの1つの機能である「感電保護」を取り上げます。

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保護接地

 感電に対する保護対策として、電気的絶縁を行うのに加え、保護接地(PE)を利用することもできます。したがって、基礎絶縁を行ったAC-DC電源とPE接続された1個の出力は、2つの保護対策を要する安全要件を満たします。出力電圧がフロート状態の場合は、二重絶縁または強化絶縁を行った電源のみ許容可能です。危険電圧はどれも露出しないでください。露出している導電部品は、通常動作状態および単一故障状態において危険が生じないようにしてください。

 IEC回路は次のように分類されます。

クラスI機器

 1つの保護レベルとして保護接地(例:金属筐体を接地、または出力を接地)と故障した電源の切断(ヒューズまたはサーキットブレーカー)を行うため、基礎絶縁のみが必要なシステム。危険電圧は露出されない(金属筐体または非導電性筐体を接地)。クラスI電源には、次のアース記号を表示する必要がある。

クラスII機器

 金属筐体を接地不要にするために、二重絶縁または強化絶縁を行う。危険電圧は露出されない(非導電性筐体)。PE接続は不要だが、フィルターの接地接続を行うことがある(保護接地ではなく機能接地)。クラスII電源には、次の二重絶縁記号を表示する必要がある。

注:EMC規制に適合するためにAC-DC電源をフィルター接地(FG)接続する場合、感電に対する保護を目的とする接地接続が不要であれば、クラスII電源として分類できる。

クラスIII機器

 SELV電源から給電され、危険電圧が内部で生成される可能性がないため、機能絶縁のみ必要。機能接地を使用する場合があるが、PE接続は認められていない(電源を介したグランドへのリターンパスがない)。クラスIII電源には、次のクラスIIIの記号を表示する必要がある。

 非常に紛らわしいことに、NEC(National Electrical Code:米国安全工事規格)の分類でも、様々な保護レベルの記述に同様の「クラス」方式が使用されています。ただし、過剰なエネルギー損失(火災危険)に対する保護レベルの記述には、アラビア数字を使用しています。NECにおける回路の分類は以下のとおりです。

  • クラス1回路
    • 電力制限<1kVA および、出力電圧<30Vac
  • クラス2回路
    • 電力制限<100VA、入力電圧<600Vac および、出力電圧<42.5Vac
  • クラス3回路
    • 電力制限<100VA、入力電圧<600Vac および、出力電圧<100Vac。感電に対する追加の保護対策が必要。

実用的ヒント
 紛らわしいので、電源のクラスの話をするときは、IECとNECのどちらの定義を使っているかを確認することが重要です。

 DC-DCコンバーターの場合、上述の分類は間接的な関係しかありません。ほとんどすべての低入力電圧DC-DCコンバーターはクラスIII電源として分類できます。例外は入力電圧または出力電圧が高いDC-DCコンバーターで、例えば、鉄道、太陽光発電所、電気自動車などで使用され、感電の危険を減らすためには追加の保護対策が必要なものです。クラスIまたはクラスIIのAC-DC電源は絶縁されるので、これらはアースを基準にすることができます。同じことが絶縁型と非絶縁型のいずれのDC-DCコンバーターについても言えます。図6に、通信回路で一般に使用されている接地方式を示します。この回路では、すべてのDC電圧がアースを基準にしています(クラスIの入力、クラス2の出力)。


図6:通信用電源の接地方式

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⇒「DC-DCコンバーター活用講座」連載バックナンバーはこちら


執筆者プロフィール

Steve Roberts

Steve Roberts

英国生まれ。ロンドンのブルネル大学(現在はウエスト・ロンドン大学)で物理・電子工学の学士(理学)号を取得後、University College Hospitalに勤務。その後、科学博物館で12年間インタラクティブ部門担当主任として勤務する間に、University College Londonで修士(理学)号を取得。オーストリアに渡って、RECOMのテクニカル・サポート・チームに加わり、カスタム・コンバーターの開発とお客様対応を担当。その後、オーストリア、グムンデンの新本社で、RECOM Groupのテクニカル・ディレクタに就任。



※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。

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