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アルミ電解コンデンサー(2)―― 箔の様子中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(35)(1/3 ページ)

今回はアルミ電解コンデンサーのキーパーツの1つである箔(はく)の様子について詳しく説明していきます。

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 前回はアルミ電解コンデンサーについて、

  • 誘電体は電解液ではなく、陽極(+極)箔表面に設けられた酸化アルミニウム(Al2O3)であること、
  • 酸化アルミニウムはアルミ箔との間に疑似ダイオードを作り、
  • アルミ電解コンデンサーはこの空乏層容量を使用したものであること、
  • 電解液はこの酸化アルミニウムの表面に接触して電荷を取り出す陰極の働きをすること、

など、構成部品とその機能について説明しました。今回はアルミ電解コンデンサーのキーパーツの1つである箔の様子についてもう少し詳しく説明していきます。
 (本稿ではアルミニウムとアルミの用語を厳密には使い分けしていません)

アルミ電解コンデンサーの主要構成部材

 前回紹介した表1の工程に従って部材について説明していきます。今回は1、2工程の箔についてです。


表1:アルミ電解コンデンサーの製造工程

1.アルミ箔のエッチング

 コンデンサーの容量を増加させるには誘電体の比誘電率εSによる方法以外にも電極面積Aを拡大する方法があります。しかし箔の素材は40〜100μmほどのアルミ箔ですから機械的に折りたたんだとしても限界があり、単純に面積を拡大すると大型化します。
 したがって一般には図1図2図3に示すようにアルミ箔表面をエッチング処理*1で粗面化して表面積を拡大します。このエッチング処理には陽極(+極)箔用、陰極(−極)箔用の2種類があり、陽極用の箔はこの後に箔表面に酸化アルミを生成させる化成処理が行われます。

 なお、エッチング工程についての情報はほとんど公開されておらず、次に示す図1は入手できた情報の一例です。コンデンサー工場の見学機会があればアルミ箔製造工程を見学されることをお勧めします。


図1:電極箔のエッチング工程

*1:エッチングとは電気化学反応の一種であり、図1(b)のエッチング液中の電極板とアルミ箔の間に電流を流してアルミ箔を選択的に溶解します。エッチングによりφ10nm〜16μm、深さφ✕(50〜2000)倍のピットと呼ばれる孔を開けることができます。
*2:前処理には(脱脂処理+水洗)が含まれ、後処理の箔洗浄には(水洗+化学洗浄+水洗)が含まれます。またエッチング工程は必要に応じて増減されます。

 作業用のアルミ箔の幅としては500mm程度で連続した箔を用いて連続エッチングを行います。したがって搬送用ローラーがブレていると箔が蛇行して損傷しますのでローラーの平行度管理、軸受けの摩耗管理などはメーカーの工程管理ノウハウの1つです。
 このエッチングには交流で行うものおよび、直流で行うもの、の2つの方法があり、それぞれ得られる効果が違います。ここでは高圧箔、低圧箔の2種類に分類しますが中圧箔の分類を設けているメーカーもあります。

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