アルミ電解コンデンサー(4)―― 電解液、組み立て、再化成:中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(37)(2/3 ページ)
前回に引き続いて電解液、素子の組み立て、そして再化成までを説明していきます。
電解液の要求機能
ここまで説明してきた電解液の要求特性をまとめると次のようになります。
- 電解紙に保持される適度な粘性
- ピット内部や電解紙の繊維内部によく浸透すること
- 低温で氷結することなく、また高温で特性が低下しない幅広い温度特性
- 取り出された信号をロスなく陰極箔に伝える高い電気伝導率
- 封口ゴムから蒸発しにくく、カシメ部から漏れ出さない低液漏れ性
- 酸化膜を保護し、欠陥部分を修復する化成性
- 接触する部品を侵さない安定性
などです。こう考えてくると電解液は各社の経験やノウハウの詰まったものだということが分かりますが電解液もその多くは成分を指定した調合済品を化学メーカーから購入しているのが現状です。
電解液の含侵
このように電解液はアルミ電解コンデンサーにとって必須の要素なのですが電解液は常温では高粘度のグリース状ですので簡単には電解紙やピットの隙間に浸透していくことはできません。
このために実際には高温(100℃前後)にして低粘度化し、前回説明した箔と電解紙を巻回してできた素体に減圧(真空)雰囲気中で含浸を行います(図2)。
しかし、高温下の減圧含浸は電解液などに急激な蒸発運動や沸騰および、化学反応が起きる可能性がありますので作業条件の設定には注意する必要があります。
組み立て
含侵済の素体をアルミの缶ケースに挿入し、封口ゴムを通した後にアルミ缶の端部をカシメて封口し、樹脂スリーブをかぶせて部品として完成させます。
アルミ電解コンデンサーは通電中にも電解液による自己修復機能が働き、微少なH2ガスが発生しますが通常の使用電圧内で発生するH2ガスのレベルは封口ゴムを通じて、あるいはその他の反応で徐々に消散してしまうので、格別な問題は生じません。
しかし、このことは封口ゴムが電解液の蒸気を通すことにもなり、電解液が徐々に透過、飛散していきます。この現象は常温、常湿、無通電で保管していても発生し、最終的にはドライアップとなってコンデンサーの寿命を迎えますのでこの通気性とリード部の浸潤性も封口ゴムの重要な特性になります。図4の封口ゴムの形状も通気性を考慮して決められています。
封口ゴムはカシメの作業性、信頼性、電解液からの侵食性などを考慮して多くの場合、
- リードタイプの場合にはブチルゴム(IIR/イソブチレン・イソプレン・ラバー)の成型品
- 基板自立型(スナップイン型)の場合には強度の面からエチレン・プロピレン・ゴム(EPM)貼りのフェノール積層板
などが使用されます。
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