安易な設計が招いた焼損 ―― モータードライバーの修理【後編】:Wired, Weird(2/3 ページ)
前回に引き続き、ステッピングモータードライバーの修理の続きを報告する。1台目は、容易に修理することができたが、2台目については、大きな苦労が待ち受けていた……。
5Vレギュレーターを自作し、実装するも……
顧客から急ぎでの修理の依頼だったが、なんとか修理するしかない。5Vのレギュレーターは多数手持ち部品がある。しかし5Vの制御回路の消費電流が不明だ。まずは5Vレギュレーターを実装した基板を作った。これでDC14Vから5Vを生成できる。図3に改造写真を示す。
図3の赤四角の位置に作った基板を取り付けて、基板の丸穴を流用してスペーサーで固定した。レギュレーターの入力側には電力抵抗を接続し発熱を分散させた。AC100Vを通電したら、表示灯が点灯し、5.0Vの電圧が確認できた。とりあえずこの基板をモータードライバーに実装して客先へ送り、動作の確認を依頼した。
数日後に連絡があったが『動作しない』ということだった。どうやら5Vの制御回路に実装されていたICが劣化し、ラッチアップしている可能性が高い。制御回路に多数の部品があり、専用の部品もあるのでこの基板の修理は回路図がないと無理だ。顧客へは修理不能であることを連絡したが『3台目の修理品を送るので何とか修理して欲しい』という連絡があった。顧客も装置が停止して困っているようだった。
高価なDC-DCコンバーターICの代わりにモジュールで対応
3台目のモータードライバーを受領し基板を取り出した。しかし2台目と同じで、チップ抵抗が焼損し、DC-DCコンバーターICも破損していた。2台目の修理の経験から、基板を修理して動作可能かどうかを見極めるため5V回路のICの劣化状態を確認した。
この方法は簡単で5V回路の消費電流を確認すればよい。抵抗値を測定したら10kΩ以上の抵抗値があった。安定化電源でDC5Vを供給したら、0.1Aの電流が流れた。これならICはラッチアップしていないので修理しても動作するだろう。
実装されたDC-DCコンバーターIC「MAX730」は生産中止で入手に時間がかかり、かなり高価だった。この部品はあきらめ3Aの供給が可能なオンボードDC-DCコンバーターモジュールを手配した。1週間程度でモジュールが入手でき、基板を改造した。改造した基板を図4に示す。
図4:基板下側に焼損したチップ抵抗の代わりにディスクリートの抵抗を実装(黄枠部)。基板右側の上寄りから配線を取り出しDC-DCコンバーターモジュールを取り付けた(赤枠部) ※一部加工を施している (クリックで拡大)
図4下側の抵抗は焼損したチップ抵抗の代わりにディスクリートの抵抗を実装した。右上のDC-DCコンバーターICは電源端子ピンの3本を切って電源回路から切り離し、配線を取り出してDC-DCコンバーターモジュールにハンダ付けした。追加したモジュールは少し大きめだったが、図1と同じ位置の部品面にスペーサーとネジで固定した。AC100Vを通電したら電源表示のLEDは正常に点灯し、電圧5.0Vが確認できた。早速、客先へ送って確認してもらったら『正常に動作した』と連絡があった。3台目の修理はとりあえず、一段落した。
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