連載
デジタルオシロスコープの校正やプローブの概要:デジタルオシロスコープの基礎知識(3)(4/9 ページ)
連載最終回となる今回は、オシロスコープに接続する「さまざまなプローブの概要や注意点」および、観測結果の信頼性を確保するための「校正」について解説する。
高電圧差動プローブ
パワーエレクトロニクス機器では、コモンモード電圧を持った2点間の電圧波形観測を行う場合が多いので、高電圧差動プローブがよく使われる。下表にテクトロニクスの高電圧差動プローブを示す。
型名 | 周波数帯域 | 減衰比 | 最大差動電圧 | 最大対地電圧 | ディレーティング 電圧 |
CMRR(代表値) |
---|---|---|---|---|---|---|
P5200A | 50MHz | 50:1 / 500:1 | ±1300V DC + peak AC |
1000Vrms (CAT II) |
35Vrms (50MHz) |
DC:80dB 以上 100kHz:60dB 以上 3.2MHz:30dB 以上 50MHz:26dB 以上 |
P5202A | 100MHz | 20:1 / 200:1 | ±640V DC + peak AC |
300Vrms (CAT II) |
20Vrms (100MHz) |
DC:80dB 以上 100kHz:60dB 以上 3.2MHz:40dB 以上 50MHz:30dB 以上 |
P5205A | 100MHz | 50:1 / 500:1 | ±1300V DC + peak AC |
1000Vrms (CAT II) |
20Vrms (100MHz) |
DC:80dB 以上 100kHz:60dB 以上 3.2MHz:40dB 以上 50MHz:30dB 以上 |
P5210A | 50MHz | 100:1 / 1000:1 | ±5600V DC + peak AC |
2300Vrms (CAT I) |
30Vrms (50MHz) |
DC:80dB 以上 100kHz:60dB 以上 3.2MHz:40dB 以上 50MHz:30dB 以上 |
TMDP0200 | 200MHz | 25:1 / 250:1 | ±750V DC + peak AC |
550Vrms (CAT I) |
15Vrms (50MHz) |
DC:-80dB 以上 100kHz:-60dB 以上 3.2MHz:-30dB 以上 100MHz:-26dB 以上 |
THDP0200 | 200MHz | 50:1 / 500:1 | ±1500V DC + peak AC |
1000Vrms (CAT II) |
15Vrms (100MHz) |
DC:-80dB 以上 100kHz:-60dB 以上 3.2MHz:-30dB 以上 100MHz:-26dB 以上 |
THDP0100 | 100MHz | 100:1 / 1000:1 | ±6000V DC + peak AC |
2300Vrms (CAT I) |
15Vrms (100MHz) |
DC:-80dB 以上 100kHz:-60dB 以上 3.2MHz:-30dB 以上 100MHz:-26dB 以上 |
表3:テクトロニクスの高電圧プローブ |
差動プローブも高電圧プローブと同様にディレーティング電圧に注目する必要がある。高い周波数の電圧測定を行う場合は、事前にディレーティング電圧を確認する必要がある。
インバーターでモーターを駆動する回路のハイサイド(上アーム)のトランジスタの挙動を、高電圧差動プローブを使って観測する場合を示す(図8)。ハイサイド側は大きなコモンモード電圧が印加されるため、正確な波形観測ではCMRR(Common Mode Rejection Ratio、同相信号除去比)の仕様に注目する必要がある。
実際のインバーターの波形観測でCMRRの影響を見るには、下図に示すように高電圧差動プローブの両端子をコモンモード電圧が大きく変化する点に接続するとコモンモードの影響が分かる。
インバーターの測定などノイズが多くある環境下で、高電圧差動プローブを使う場合はノイズの影響を低減させるため、下図のように入力リードをツイストして使うことを勧める。
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