Bluetooth 5.1で追加された「方向検知機能」を知ろう:Bluetooth位置情報サービスの種類と市場を知ろう(後編)(3/3 ページ)
前編では、Bluetooth位置情報サービスの具体的な活用法について区分に分けて紹介しました。後編では、より高精度な位置情報サービスの実現を目指し、Bluetoothコア仕様バージョン5.1(Bluetooth 5.1)に追加された、方向検知機能について解説します。
AoAを使ったロケーションシステム
AoAを使用して実現するロケーションシステムの例を下図で示します。
この場合、対象物(Asset)の場所を特定するために、複数のAoA受信機(ロケーター)が先に述べた方向検知を行います。それぞれのロケーターで得た方向データをゲートウェイで集め、それぞれのロケーターの位置と得られた方向情報からポジションエンジンで位置を特定するための演算をします。
この方式の利点は、AssetはCTEを出すことができればよいだけの非常に単純な機能があれば良いため、Assetが安価にできることです。インフラとなるロケーター、ゲートウェイ、ポジションエンジンを用意する事でロケーションシステムが実現でき、位置を特定する対象が多い場合に実用性が高い方式と見なすことができます。
AoDを使ったロケーションシステム
AoDを使用して実現するロケーションシステムの例を下図に示します。
AoDでは、自分の位置とアンテナ切り替え情報を通知する事ができるAoDビーコンと、AoDの受信機となるモバイル端末により実現できます。この場合、AoAを使用したシステムより簡素化できますが、モバイル端末に高い処理能力が求められ、また、内蔵するBluetoothモジュールからIQデータを入手して処理する物理層に近い処理ができる事が求められます。そのため、モバイル端末のOSによる対応の状況で、この方式の可否が大きく影響を受けます。
方向検知機能がもたらす位置情報サービスの可能性
方向検知機能の精度は、アンテナアレイの設計に大きく依存します。3次元の方向(水平と高さ)を取得するには、2次元のアレイアンテナが必要となり、安定した性能を得るためにはサイズも大きくなります。またアンテナの配置、測定間隔など、システムの最適化を行う余地が多くあるため、システム開発者の活躍が期待されます。またBluetoothはロケーション検知だけでなく、データ通信を同時に行う事もできるため、これらの利点とノウハウを生かすソリューションの登場も期待できます。
既に実証と信頼を得ているBluetoothの無線技術に、信号の方向を特定するため長年かけて有効性が実証された手法が追加されたことは、大きな意味があります。Bluetooth コミュニティーは、拡大を続ける参入市場のニーズを満たしながら、さらに新しい市場機会を捉えるため継続的に技術を強化し続けています。Bluetoothコミュニティーは無線技術のBluetooth LEを導入し、標準化された低コストの位置情報サービスソリューションという市場機会を追求しました。Bluetoothの位置情報サービスをサポートする製品は2023年までに年間4億3000万台出荷されるようになると予測されており、Bluetoothコミュニティーは順調にその数字を達成しようとしています。
特別監修:Silicon Labs
Bluetooth 5.2に対応し超低消費電力を実現したEFR32BG22等のSoCデバイス、超小型で技適取得済みのBGMモジュール、ゼロプログラミングですぐに利用可能なBluetooth Xpress(BGX)など、多彩なソリューションで顧客の迅速な開発を可能にするBluetoothソリューションを展開しています。
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