DC-DCコンバーターの信頼性(5)半導体の信頼性とESD:DC-DCコンバーター活用講座(34)(3/3 ページ)
前回に引き続き、DC-DCコンバーターの信頼性に関して説明していきます。今回は、パワー半導体やインダクターの信頼性、静電気放電(ESD)について解説します。
インダクターの信頼性
インダクターは、ほとんど全てのDC-DCコンバーターに使われています。トランスはあらゆるコンバーター設計における核心部であり、総合的な性能を決める、何にも増して重要な部品です。
最も一般的に使われているトランスは、フェライトトロイダルタイプまたはボビンタイプです。これらのタイプは高周波数動作に適し、閉磁路と一緒に作ることができます。フェライトコアは、酸化鉄(Fe2O4)にマンガン亜鉛(MnZn)やニッケル亜鉛(NiZn)などの他の金属と成形剤を混ぜ合わせたもので、プレスして成形してから高温で焼き、簡単に磁化できる結晶構造を作り出します。
コアはもろいので慎重に扱う必要があります。超小型トロイドは、さらにナイロンかエポキシ塗料をコーティングすることがよくあります。これは、表面を滑らかで滑りやすくして、輸送時の損傷の危険を減らすとともに、手で巻きやすくするためです。市場に出ている大量生産の小電力DC-DCコンバーターの多くが手巻きのトロイダルトランスを使っているということに驚くかもしれません。しかし、コアの大きさがわずか直径約6mmで3mmの穴があり、独立した巻線を6つ必要とするトランスを作る自動プロセスを開発するのは難しく、いまだに十分なものはありません。
RECOMには、そのようなトロイダルトランスを製造する自動巻線機が2台あります。しかし、それは私達が自分たちのために開発したもので、市場では手にはいりません。この問題は、ボビン型トランスにはあてはまりません。ボビン型トランスは、プラスチックキャリア(ボビン)に機械巻きの巻線を使用しており、半分になっている2個のフェライトコアをボビンの周りに接着して作ります。
2種類の構造のうち、トロイダルコアが本質的に最も信頼性があります。さらに、トロイダルコアは、磁束がコア内にしっかりと固定されているため、自己遮蔽型でもあります。ボビン型トランスは、組み立て時や使用中に割れが生じると故障する可能性があります。割れは、望ましくないエアギャップを生じ、後で特性を変えてしまうことになります。半分になっている2個のフェライトを貼り合わせることに対しても同じことが言えます。半分のフェライトは、傷つかないように正しくそろえ、密着するようにしっかりと重ねあわせる必要があります。信頼性設計において最も考慮すべきことは、コアの温度をキュリー温度より十分に低く保つことです。キュリー温度というのは、コアが磁性を失い始める温度のことです。フェライトの配合材料が違えばキュリー温度も違ってきます。
トランスと違って、スイッチングレギュレーター用のインダクターあるいはEMCチョークもSMD部品としてPCB上に使うことができます。SMDインダクターは、通常、セラミックまたはフェライトキャリアにワイヤを巻いたもので、RFチョークはMLCCに似た多層構造で作ることもできます。
遮蔽型のインダクターを使うことを強くお勧めします。磁性遮蔽が、隣り合う部品間の干渉を遮断するだけでなく、もし2つの非遮蔽型インダクター同士が非常に近接して置かれた場合、相互作用によって実効インダクタンスが下がります。
非遮蔽型のインダクターはまた、DC-DCコンバーターの外部のアプリケーションの全体的な信頼性を低下させる可能性があります。漂遊磁界が、それがPCBトラックであろうと、コンデンサー層であろうと、巻線器であろうと、隣接するあらゆる誘導体に向かって電流を誘導します。
ほとんどのフェライトは、「ベッドダウン」するにつれて初期の性能がより向上します。コンバーターがオンオフするたびに周期的に繰り返される加熱と冷却および急速に振動する磁束の動揺によって磁気境界が自己調整され、透磁率の改善が遅くなります。これはDC-DCコンバーターの性能の観点からは好ましいことと言えますが、非遮蔽型のインダクターは、使用開始後数週間の間に、投射磁界をゆっくりと強めていき、突然問題を起こすことになります。これとは逆に、遮蔽型のインダクターは、あらゆる漏えい磁束をゆっくりと締め付けていきます。この現象は、使用開始後約50〜60時間で止まり、その後は安定します。
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※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。
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