ワインセラー用の海外製電源の修理(後編):Wired, Weird(3/3 ページ)
SNS経由で相談を受けた海外製ワインセラーの電源の故障に関する報告の続きだ。基板を手元に取り寄せたので、部品の交換に取り掛かろう。
原因究明ならず
発送して3日後に依頼主から連絡があった。『電源単体で通電したが赤ランプは点灯せず、正常には動作していない』という連絡だった。電源の部品が壊れたようだ。交換していなかった一次側の全波整流ダイオードの2個のダイオードが切れた可能性が高い。
問い合わせたワインセラーの販売店からも連絡があったが、質問への回答はなく有償修理の案内だった。残念だがワインセラー電源故障の原因究明には至らなかった。
依頼主は修理をあきらめてしまったようでその後の情報が入らなくなった。全くの手詰まり状態になった。そこで基板に記載されていた番号の『0757-83835908』を思い出した。この番号をWebで検索したら偶然にも回路図が見つかった。図8に示す。
図8の回路図は電子冷蔵庫に搭載された基板だったが同じ番号の基板だった。入力部や使用されていた部品の定格はほぼ同じだ。コネクターにはペルチェやセンサーが接続されていた。また電源の入力電圧にはAC120Vと記載されていた。設計時の電源仕様と国内の使用条件が合っていない可能性がありそうだ。
この回路図の書き方は以前修理したATX電源と類似していた。最初にこの回路図を見つけていればワインセラーの電源の修理は完了できたと思う。依頼主へも回路図を送ったが返事はなかった。残念ながら修理を完全にあきらめてしまったようだ。
海外生産でやむを得ない部分はあるが……
今までの電源の修理の経験だが、通常の電源では電力に余裕がある。しかし長期の稼働で電源の心臓部の小型の電解コンデンサーが高周波駆動を行って劣化していた。その結果電解コンデンサーのESRが大きくなり電源全体の能力が低下していた。この心臓部の小型の電解コンデンサーを交換することで簡単に修理できた。
今回のワインセラーの電源の壊れ方は今まで修理した電源の壊れ方とは全く違っていた。ワインセラーの電源は駆動能力が低いために、トランスの駆動回路が過負荷になって過熱し、短絡破損していた。この故障の根本原因は供給電圧が違うことにあると思われた。
海外で製造されて国内で販売される家電製品は価格が安いのが魅力だ。しかし、日本の法律の製造物責任(PL)は海外の製造者へ適用はできないので、PL責任は販売者が負うことになる。しかし、販売者は電気機器の安全性や性能に関する技術的な知識は持ち合わせていないだろう。
過去にも海外生産の電気機器を多数修理したが、国内の設計基準であるJEITAの規定が守られていないことが数多くあった。JEITAの規格は日本の設計基準なのでやむを得ない。しかし、購入者を保護するために海外生産の電気機器も安全や回路、製造の検証の義務付けは必要と思われた。これが実施されれば、電気機器の弱点が事前に克服されて販売者と購入者の両者が保護されるだろう。
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