セラミックキャパシター(7) ―― 使用上の注意点とディレーティング:中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(51)(4/4 ページ)
今回はセラミックキャパシターシリーズのまとめとして、「使用上の注意点」や「ディレーティング」について説明します。
信頼性設計
MIL-HDBK-217Fのセラミックキャパシター(CK形式)を参考に次のような条件で故障率を推定します。
基本故障率λB=0.00099(1/106Hr)
要因 | 温度ファクタπT | 容量ファクタπC | 電圧ファクタπV | 品質ファクタπQ | 環境ファクタπE |
---|---|---|---|---|---|
式 | 4式 | 5式 | 6式 | (2文字形) | GB |
条件 | 温度60℃ | 0.1μF | 70% | 信頼性未確認 | 地上、温和 |
係数 | 4.2 | 0.81 | 2.6 | 3 | 1 |
表3:使用条件一覧 |
総合故障率λは7式で求まります。
λ=λB×πT×πC×πV×πQ×πE …7式
したがって、表3の各値を代入すると総合故障率λは
λ=0.00099×4.2×0.81×2.6×3×1=0.0263
となります。また積層セラミックキャパシター(MLCC)では基本故障率λBが、
λB=0.0020とほぼ2倍になりますのでMLCCでは同条件でλ=0.0526となります。
この値は次のJEITAの市場実測データ
- 0.026(一般品)
- 0.053(チップ)
と合致していると言えるでしょう。
上記の故障率は電圧ディレーティング70%、使用温度60℃で算出しました。電圧ディレーテングを標準的な80%まで許容すれば使用温度は53℃以下で使用することになり、これらのディレーテイング率が現実的な値と考えられます(年間平均機器周囲温度Ta=25℃時、機器内温度上昇ΔTa<28deg)。
次回はキャパシターのシリーズ最終回として電気二重層キャパシターについて説明したいと思います。
【参考文献】
1)村田製作所 キャパシターのFAQ セラミックキャパシターの静電容量は経時変化するのですか?
2)電子機器用固定磁器キャパシターの安全アプリケーションガイド RCR-2335B
3)TDKテックノートソリューションガイド 高信頼性MLCCのたわみクラック対策
4)Wikipedia Ceramic Capacitor (2020/12/27)
5)TDKテックノートソリューションガイド 高信頼性MLCCのはんだクラック対策
6)東レリサーチセンターThe TRC News No.119(Jun.2014)電子材料(5)積層セラミックキャパシターの各種分析事例
執筆者プロフィール
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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