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低周波のインピーダンス測定例とLCRメーターの校正LCRメーターの基礎知識(3)(3/4 ページ)

今回は低周波のインピーダンス測定を行う事例について、LCRメーターを使う場合とロックインアンプや周波数特性分析器などを使う場合に分けて解説する。

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LCRメーター以外の測定器を使っての測定例

 インピーダンス測定はLCRメーターやインピーダンスアナライザーといった専用測定器でなくても行える。ロックインアンプ、周波数特性分析器(FRA)、電力計などを使えばインピーダンスを測定することができる。

スピーカーのインピーダンス測定

 スピーカーのインピーダンスは古くから測定されてきた。規格で規定されているスピーカーのインピーダンス測定はI-V法であるが、スピーカーに流れる電流とスピーカー両端の電圧の位相差は測定していない。

 電圧と電流のレベル測定は交流電圧計もしくは広帯域のデジタルマルチメーターが使われる。

 スピーカー回線のインピーダンスを測定する専用測定器は販売されている。


図9:スピーカーのインピーダンス測定 出典:JEITA規格 スピーカーシステム(EIAJ RC-8124A)

生体細胞の膜容量測定

 生体細胞のように微弱な信号を取り扱う場合はロックインアンプを使ってインピーダンス測定を行う。下記は唾液腺や涙腺などの分泌細胞の研究で使われているパッチクランプ法による生体細胞膜の容量を測定する仕組みである。


図10:生体細胞の膜容量測定 出典:生体信号の計測と信号処理(電気学会論文誌C、2002年 Vol,122-C No.9)

圧電粉体レベルセンサーの測定

 複写機のトナーの残量を検知するにはケースに入った粉体量の測定が必要となる。ここで使われるセンサーは圧電振動子と粉体を接触させることによって圧電素子のインピーダンスが変化する現象が生じる。


図11:粉体量と圧電素子の特性変化 出典:圧電粉体レベルセンサTSPシリーズ(TDKホームページ)

 圧電素子を振動させてインピーダンスを測定するには周波数特性分析器(FRA)が使われる。周波数特性分析器に内蔵された発振器の周波数をスイープさせて、圧電素子に流れる電流と端子間の電圧を同時に測定することによってインピーダンスが求められる。


図12:圧電素子のインピーダンス測定

【ミニ解説】周波数特性分析器(FRA)

 周波数特性分析器はサーボアナライザーとも言われている測定器である。測定対象に信号を与えて、その周波数特性を得るものである。

 本体には信号発生器と2組の信号の大きさと基準信号との位相差を測定できる回路が組み込まれている。ロックインアンプによってインピーダンス測定装置を構築するより簡単であるが、測定対象にあわせた周辺機器の選定には知識が必要となる。

 位相検波器を用いた周波数特性分析器は大きなダイナミックレンジが得られる特長がある。最近は測定信号を直接A-D変換器で読み取り、デジタル信号処理によって周波数特性を得る仕組みがオシロスコープのFRAオプションとして用意されているがダイナミックレンジは信号を読み取るA-D変換器の能力に依存する。


図13:周波数特性分析器(FRA)のブロック図

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