スペクトラムアナライザーの構造と基本的な設定:スペクトラムアナライザーの基礎知識(2)(5/5 ページ)
今回はスペクトラムアナライザーの構造や基本的な設定、仕様上の注意点について解説を行う。
コネクターの取り扱い
高周波コネクターは、規定された伝送インピーダンスを保証するために精密な構造となっている。高周波コネクターは利用する周波数によって使われる種類が異なるため、市場では多くの種類の高周波コネクターが使われている。下表には測定器などの機器で使われている主な高周波コネクターを示す。
コネクタータイプ | 標準規格番号など | 上限周波数[GHz] | トルク[N*m] | 発表年や備考 |
---|---|---|---|---|
F | IEC61169-24 d2.0(2009) | 3 | 0.46〜0.69 保証:1.7 |
75Ω |
BNC(50Ω) | IEC61169-8 Amend(2007) | 4 | バヨネット・ロック | 1944年 |
SMA | IEC61169-15(1979) | 18 | 0.8〜1.1 | 1958年(26.5GHzまで使用可能) |
N(50Ω) | IEC61169-16 | グレード2:11 グレード1:18 グレード0:18 |
通常:0.7〜1.1 保証:1.7 (MIL、IEC) |
1942年 75Ω:61169-16 Annex A |
IEEE Std 287-2007 Annex E | 18 | 1.3〜1.7 | 1965年精密型Type-N | |
3.5mm | IEC60169-23(1991) | 34 | ― | 1976年 |
IEEE Std 287-2007 Annex F | 33 | 0.9±0.1 安全:1.7 |
||
2.92mm | IEC 61169-35(2011) | 40 | 0.8〜1.1 保証:1.69 |
2.92mm:1974年 K:1983年(2.92mmの再発表) |
IEEE Std 287-2007 Annex G | 40 | 0.8±0.2 安全:1.8 |
||
2.4mm | IEC61169-40(2010) | 50 | 0.8〜1.1 保証:1.6 |
1986年 |
IEEE Std 287-2007 Annex H | 50 | 0.9±0.1 安全:1.6 |
||
1.85mm | IEC 61169-32(1999) | 65 | 0.8〜1.1 保証:1.65 |
1986年 |
IEEE Std 287-2007 Annex I | 65 | 0.9±0.1 安全:1.6 |
||
1.0mm | IEC 61169-31(1999) | 110 | 0.7 | 1989年 |
IEEE Std 287-2007 Annex J | 110 | 0.45±0.05 安全:0.7 |
||
保証トルク:破壊や変形を生じない値(Proof torque) 安全トルク:破壊や変形を生じない安全な値(Safety torque) 出典:マイクロ波/ミリ波 同軸コネクターの基礎と取り扱い方(RFワールド No.33、CQ出版)記事から作成 |
よく使われるNコネクターは手で締め付けて利用できるが、数十ギガヘルツ以上の信号を扱うコネクターを使う場合は決められたトルクで締め付けるのが望ましい。締め付けトルクを確保するためには専用のトルクレンチを用いる。
高周波コネクターや高周波ケーブルアセンブリを選ぶ場合は、仕様が保証されたものを選ぶ必要がある。市場では安価な高周波コネクターが販売されているが、特性が規格に準拠していないものがあるので注意が必要である。
屋外でスペクトラムアナライザーを使用する場合はコネクターにほこりや砂など異物が入る危険があり、コネクターを接続する際にコネクターを変形させたり、傷をつけたりする可能性がある。また、スペクトラムアナライザーを持ち歩くときは器物にぶつけてコネクターを変形させる危険がある。このため、スペクトラムアナライザー単体を持ち運ぶ際はコネクターにキャップを取り付けるのが望ましい。
USBスペクトラムアナライザーへの電源供給
最近、各社から発売されているUSBスペクトラムアナライザーは、電源をノートPCやタブレットからUSBケーブルを介して供給する仕組みになっている。USB規格にはいくつかの種類があり、供給できる電源容量が異なる。USBスペクトラムアナライザーを利用する場合は、ノートPCやタブレットの電源供給能力をあらかじめ調べておく必要がある。
【コラム】日本国内で販売されている主なスペクトラムアナライザー
日本国内では複数の測定器メーカーからスペクトラムアナライザーが販売されている。なお、校正証明書が発行されていない電波探知機もスペクトラムアナライザーという名称で販売されているが、ここでは測定器ではないとして対象外としている。
据え置き型 | ポータブル型 | USBモジュール型 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
9GHz以下 | 9GHz〜20GHz | 20GHz以上 | 9GHz以下 | 9GHz〜20GHz | 20GHz以上 | 9GHz以下 | 9GHz〜20GHz | 20GHz以上 | |
アンリツ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
キーサイト・テクノロジー | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
ローデ・シュワルツ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
テクトロニクス | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
RIGOL TECHNOLOGIES | 〇 | ||||||||
GW Instek | 〇 | ||||||||
マイクロニクス | 〇 | ||||||||
Signal Hound | 〇 | 〇 |
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