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SiCパワーMOSFETのデバイスモデル、オン時の容量考慮で精度が大幅向上SiC採用のための電源回路シミュレーション(1)(3/5 ページ)

スイッチング動作が極めて高速なSiCパワーMOSFETを用いた電源回路設計では、回路シミュレーションの必要性に迫られることになるが、従来のモデリング手法を用いたデバイスモデルでは精度面で課題があった。本連載では、この課題解決に向けた技術や手法について紹介する。

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オン時の容量に着目する

 SiCパワーMOSFETのモデリングにおいてIV特性とCV特性、Sパラメーターという3種類の電気的特性を測定すること自体は、電源回路設計では先進的な取り組みだといって過言ではないだろう。従来の電源回路設計の現場では、ネットワークアナライザーを使ってSパラメーターを測定することはほぼなかった。これまで盛んに使っていたIGBTやSi(シリコン)パワーMOSFETは、スイッチング速度があまり高くなかったため、ICパッケージの高周波特性を考慮する必要がなかったからである。

 しかし、SiCパワーMOSFETのスイッチング動作は極めて高速だ。このため、ネットワークアナライザーを使ってSパラメーターを測定することで、高精度なデバイスモデルを作成できるように工夫した。ところが、それでも図2に示したように、測定結果とシミュレーション結果が合わない。

 理由はどこにあるのか。ここでキーサイトはいま一度、SiCパワーMOSFETの測定結果や、回路シミュレーターによる解析結果を注意深く確認した。その結果、SiCパワーMOSFETに電流が流れているときの容量特性が測定結果と合わないことが判明した。

 測定結果とシミュレーション結果が合わない原因はCV特性の測定にあった。従来は、オフ時(電流を流していないとき)の容量だけを測定し、それをモデリングに利用していた。つまり、オン時(電流を流しているとき)の容量は考慮していなかったわけだ。

 実際のところ、SiCパワーMOSFETの容量はいずれも電圧依存性を持っている(図3)


図3:SiCパワーMOSFETの容量
SiCに限らず、パワーMOSFETにはさまざまな容量が存在する。この図はそれをまとめたものだ。[クリックで拡大] 出所:キーサイト・テクノロジー

 言い換えれば、電圧を印加すれば容量は変化する。ここではCgg(ゲート容量)とCiss(入力容量)を例に説明しよう。実は、どちらも全ゲート容量(Total Gate Capacitance)と呼ばれており、Cgs(ゲート-ソース間容量)とCgd(ゲート-ドレイン間容量)の和である。つまり、「Cgg=Ciss=Cgs+Cgd」という数式が成り立つ。

 しかし、CggとCissは完全にイコールな存在ではない。Cggは、ドレイン電圧が0Vのときの容量値であり、ゲート電圧依存性を持つ。一方のCissはゲート電圧が0Vのときの容量値で、ドレイン電圧依存性がある。図4は、CggとCiss、Vgs(ゲート-ソース間電圧)、Vds(ドレイン-ソース間電圧)の関係を3次元グラフで表現したものだ。この図のように、VgsとVdsが変化すれば、CggとCissは大きく変化する。


図4:CggとCiss、Vgs、Vdsの関係
CggとCiss、Vgs、Vdsの関係を3次元グラフで表現した。Cggはゲート電圧依存性、Cissはドレイン電圧依存性を持つため、どちらもオン時には容量値が大きく変動する。[クリックで拡大] 出所:キーサイト・テクノロジー

 従って、オン時の容量を考慮していなかった従来のモデリング手法で抽出したデバイスモデルでは、測定結果とシミュレーション結果がピタリ合わなかったわけだ。

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